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日 時: 2019年11月17日(日)16:10~17:40(大会部会アワー)
  ※今年は2日目の一般研究発表終了後に予定されています

会 場: 関西大学千里山キャンパス

テーマ: 都市計画学と都市地理学の対話

趣 旨:
 複雑化する現代の都市圏研究には学際的視点の重要性がいっそう高まっている。本
研究部会では隣接領域から第一線の研究者を招き、2016年度「都市経済学と都市地理
学の対話」(中村良平・岡山大学教授)、2017年度「都市社会学と都市地理学の対
話」(町村敬志 ・一橋大学教授)を開催してきた。今回は、都市計画学の分野にお
けるコンパクトシティ研究の第一人者であり、国の政策形成にも深く関与する谷口守
氏を招き、コンパクトシティ政策の目的や方法について話題提供いただき、都市圏の
将来デザインと都市構造の再構築に向けた可能性について議論を深めたい。
 なお、本研究部会では、2009年7月に中国四国都市学会および徳島大学と共催で、
公開シンポジウム「地方都市の再生-郊外展開かコンパクトシティか-」を開催して
おり、藻谷浩介氏(当時・日本政策投資銀行)による基調講演をもとに、都市地理学
研究者が中心市街地活性化や大型店立地政策との関係について議論をおこなった。今
回の企画は、それ以降10年間のコンパクトシティ政策を歩みを検証し、都市の将来を
展望する機会となるだろう。

研究発表:
コンパクトシティ政策の課題と再考
 -生活習慣病化する都市に向き合う-
・・・・谷口 守 (筑波大学システム情報系社会工学域教授)

コメンテータ:豊田哲也(徳島大)

連絡先:豊田哲也(徳島大)E-mail: toyoda.tetsuya[at]tokushima-u.ac.jp
2019.09.09  Comment:0
日 時:2019年7月13日(土)13:30~17:00
会 場:同志社大学 今出川キャンパス良心館RY408
〒602-8580 京都市上京区今出川通烏丸東入
https://www.doshisha.ac.jp/information/campus/imadegawa/imadegawa.html

テーマ:ジェントリフィケーション/リノベーション
趣 旨: 50年以上も前にロンドンで見出された「ジェントリフィケーション」は,そこに何かしらの緊張関係や葛藤を見るためか,様々な論争を含み込み,新たな関心を引き起こしてきたようにみえる。その原動力は,もしかすると街区や建物の変化を「リノベーション」と表現した時に生まれる温度差にあるのかもしれない。いずれにしても,偶然にもジェントリフィケーションをキーワードの一つとして研究に取り組む報告者と巡り会うことができた。しかも,京都,ロンドン,ポートランドといった「認知度」の高い都市を素材とする報告者達である。「比較」のなかにセレンディピティーを期待するのは尚早すぎるのかもしれない。まずは幅広い視野を持って,ローカルな経験を学びたい。

報告者・題目:
■池田千恵子(大阪成蹊大学/大阪市立大学・特別研究員):町家ゲストハウスの増加の要因と地域に及ぼす影響-京都市におけるツーリズムジェントリフィケーション-
■松尾卓磨(大阪市立大学・院):メディアの言説と商業集積に着目した現代ロンドンのジェントリフィケーション研究
■長野 悠(明治大学・院):ジェントリフィケーションの主語を問う-米国オレゴン州ポートランド市カリー地区の市民団体の取り組みから見えて来たこと-

※報告終了後,ショート・エクスカーション(同志社大学の今出川回帰の影響)および懇親会を予定しています。

連絡先:鍬塚賢太郎(龍谷大学) kuwatsuka(at)biz.ryukoku.ac.jp
※お手数ですが(at)を@に置き換えてください。

■町家ゲストハウスの増加の要因と地域に及ぼす影響-京都市におけるツーリズムジェントリフィケーション-
池田千恵子(大阪成蹊大学/
大阪市立大学・特別研究員)
 京都市を訪れた外国人宿泊客数が大幅に増加し,京都市内では宿泊施設が急激に増加している。特に簡易宿所が2011年の249件から2018年9月時点で2,710件へと増加した。簡易宿所の中で,町家を再利用したゲストハウス(以下,町家ゲストハウス)に着目し,町家ゲストハウスが増加した要因,地域に及ぼす影響,地域住民の対応について,ツーリズムジェントリフィケーションの観点を用いながら報告した。
 ツーリズムジェントリフィケーションは,地域住民が利用していた食料品店や小売店などの日常的な店が減少する一方で,娯楽や観光に関わる施設や高級店が増加し,富裕層の来住が増えることにより,賃料が上昇し,低所得者層などの立ち退きを生じさせる現象である。
 町家ゲストハウスは,2014年の40件から2018年9月の597件へと増加しているが,その要因として,京都市の関与がある。条例で玄関帳場(フロント)の設置義務を免除し,ゲストハウスへの改修資金の補助など,宿泊施設拡充の施策や空き家対策としての京都市の関与が確認された。ゲストハウスとして需要が拡大した町家は,不動産投機の対象となり,町家の価格が高騰し,町家の居住者の立ち退き,観光客向けの商業施設の増加など,ツーリズムジェントリフィケーションの発現が確認された。
 地域に及ぼす影響としては,宿泊者が玄関口で喫煙した吸い殻や分別されていないゴミの放置,就寝時間帯の騒音などに住民は悩まされていた。このような状況に対し,六原のまちづくり委員会では,六原学区内の30の町内会と共に簡易宿所の実態調査,届け出のない簡易宿所に対する営業中止の申し立て,町内会と簡易宿所の事業運営者との協定締結への指導などを行っていた。
 また,簡易宿所は,初期には観光地の近隣や交通の利便性の高い場所で増加していたが,2017年から2018年では,菊浜学区や山王学区など居住地への転換が進まなかった地域で急増していることも確認した。
 このように京都市においては,簡易宿所が急激に増加してきたが,2020年には必要な宿泊室数を1万2,000室ほど超える状況となり,今後は簡易宿所の淘汰が見込まれる。過剰に供給された簡易宿所を含めた宿泊施設が,今後どのようになっていくのか。これからも,その動向について検証が必要である。

■メディアの言説と商業集積に着目した現代ロンドンのジェントリフィケーション研究
松尾卓磨(大阪市立大学・院/ 
日本学術振興会特別研究員DC)
 英国の首都ロンドンを対象とし,英国の主要メディアの記事分析を通じたジェントリフィケーションの社会的認識と「小売業のジェントリフィケーション(retail gentrification)」とジェントリフィケーション地域における商業集積について報告した。
 前半の記事分析では,2010年から2018年にインターネット上で発信されたジェントリフィケーション関連の記事のうち,ジェントリフィケーションと特定地域を結びつけた内容を含む記事(191件)を対象とした。ロンドンではジェントリフィケーションが特に消費や地価,社会階層等と関連付けて記述されているケースが多かった。時間軸に注目すると,反ジェントリフィケーション運動の発生に伴って特定の時期(2015年)に特定の地域(ショアディッチ&スピタルフィールズやブリクストン)への言及が急増するケースが見受けられた。また,メディアの記事の中でジェントリフィケーション発生地域として言及される回数が特に多い地域はロンドンの中心地域であるインナーロンドンに集中しているということも明らかとなった。
 次に,典型的なジェントリフィケーション地域における商業集積に着目した。ロンドンでは2010年代に入りサラ・ゴンザレス(Sara González)やフィル・ハバード(Phil Hubbard)らによって「小売業のジェントリフィケーション」が論じられるようになり,ジェントリフィケーションが単に居住空間の変容や居住者階層の上方変動だけではなく,消費空間の構成や消費者の購買行動も対象化されているということを紹介した。また,ロンドンの典型的なジェントリフィケーション地域である3地域(ショアディッチ&スピタルフィールズ,ブリクストン,ペッカム)を対象とした現地調査(2019年2月実施)の結果を報告した。この3地域に立地する小規模路面店(1,204店舗)の分布,業種,営業状態の把握を通じて3地域における業種別の店舗構成の違い等を明らかにした。小売業のジェントリフィケーションに関する既往研究ではジェントリフィケーションの進行による既存店舗の立ち退きが問題視されているが,本研究の対象地域ではそうした状況は明確には生じていなかった。店舗の移転や入れ替わりをジェントリフィケーションの影響と捉えることができるのかという点を精査するためにも,経営実態や店舗構成の経年変化をより具体的に確認していくことが今後の研究の課題として浮かび上がった。

■ジェントリフィケーションの主語を問う-米国オレゴン州ポートランド市カリー地区の市民団体の取り組みから見えて来たこと-
長野 悠(明治大学・院)
 人口約60万人の都市であるアメリカ合衆国オレゴン州ポートランド市は,都市環境政策を積極的に実行してきた。例えば1993年には,国内で初めて,市として二酸化炭素排出量を削減するための政策である「地球温暖化防止戦略」を策定し,その翌年の1994年には「持続可能な都市の原則」を発表した。2000年代に入ると,複数の研究者やジャーナリストがそれらの政策を評価し,同市を「持続可能な都市」などと称すようになった。しかしその一方で,ポートランド市では,都市の再開発により経済的に恵まれた層が流入し地価の高騰を引き起こすジェントリフィケーションが深刻化するようになった。その結果,同市に住む貧困層及び有色人種が立ち退きを迫られるケースが続発している。持続可能な都市というイメージの影で,社会的弱者の生活環境が脅かされているのである。
 都市政策における「持続可能性」や「緑化」がジェントリフィケーションに繋がる可能性を指摘する研究(グリーン/環境・ジェントリフィケーション研究)は,特に2010年代に入り,ますます盛んになっている。これらの研究は,公園,エネルギー効率の良い建物,公共交通機関などの開発や整備が進むにつれ,その周辺地域もまた開発対象となり,地価や家賃の上昇,そして住民の立ち退きを招くことを批判的に検討している。しかし,そのような生活環境の改善をめぐる矛盾の指摘が中心的な関心事である一方で,地元住民が,生活環境の改善もしくは立ち退きというジレンマをどのように認識し,その現状からどのように抜け出そうとするのかという,当事者としての住民による複雑で多様な営みに注目する研究は,あまりみられない。
 本研究では,以上に示したことを前提に,ポートランド市北西部に位置するカリー地区で活動する市民団体に注目し,住民自身による公園建設とカリー地区において深刻化するジェントリフィケーション,また,空間形成に対する認識について明らかにした。多くの先行研究は,公園や公共交通機関の整備などの都市環境政策がジェントリフィケーションに繋がる過程を批判的に捉えている。しかし,本研究が焦点を当てた市民団体は,環境に配慮し持続可能な都市空間を創出する営みを全面的に否定しているわけではなかった。住民たちは,そのジェントリフィケーションにまつわる諸問題を認識しながらも,自らの主導で「持続可能な空間」を創出しようとしていた。ジェントリフィケーションによる地理現象について,地元住民は必ずしも全面的に反発しているとは限らない。彼らがこれを,自らの生存戦略に繋げていこうとする方向性についても,今後,さらに分析を進める必要がある。

■討論
Q 池田報告で示された町家ゲストハウスの増加について,海外のツーリズムジェントリフィケーション研究にどう位置付けるのか。
A(池田) 町家が観光関連施設として利用され,不動産投資の対象となることで、立ち退きが生じている。Q 松尾報告について,対象となる記事の抽出では,言葉を基準にしたのか,それとも内容も含むのか。
A(松尾) タイトルや内容にジェントリフィケーションに関するキーワードを含むものに限定した。地価の上昇という内容でジェントリフィケーションに関する語が使われていないものは対象とはしていない。
Q 長野報告について,人口構成の変化については他の指標を見たほうが良いのではないか。
A(長野) データは十分に確認しておらず,市の調査結果をそのまま使った。
Q アフォーダブル住宅の供給が計画通りではないとのことだが,カリー地区ではどうなのか。また,ポートランド全体から考えて,カリーは特別なのか。
A(長野) カリー地区では市民団体が活発なので,他の地区と比べて供給が多い。また,ジェントリフィケーションがポートランド中心部で生じたのち,玉突きのようにカリーでも生じている。ジェントリフィケーションのこれまでの経験を踏まえて,市がカリーでの取り組みを支援している。
Q 公園建設が貧困対策になるのは一般的なのか。
A(長野) 排除の論理として公園が用いられることはあるが,今後整理する必要があると考えている。
Q 松尾報告について,ブリックレーンはバングラデシュ人の街として観光客を集めているが,主体は零細資本で,周辺のバングラデシュ人の需要を満たすものであることから,立ち退きはなく,住民が入れ替わっただけではないかと考えられる。それをジェントリフィケーションの枠組みで考えてよいのか。
A(松尾) 現時点では現状把握にとどまっているため,ブリックレーンの事例をジェントリフィケーションの枠組みで理解できるかは不明であり,移民の間で零細な経営者が業種や看板を変えて入れ替わっているというのが正確であろう。経年変化を見ていくことで,国際飲食チェーンの資本が入ることなどで立ち退きが生じれば,リーテイルジェントリフィケーションとして捉えることができるのではないか。
Q ブリックレーンを中心とするショアディッチ&スピタルフィールズは,メディアに多く扱われていたというが,メディア自体がそこをジェントリフィケーションと考えているのか。
A(松尾) 今回はジェントリフィケーションという言葉を用いているかどうかを見ただけであり,メディアが年とりふぃケーションを深く理解しているかは別問題である。メディアが注目していることは事実だが,実質的な内容については議論の余地がある。
Q 記事のデータをどのように検索・入手したのか。言説分析はどのように行ったのか。
A(松尾) アーカイブ化されたものをすべて読み,他国のものや意味の異なるものなどを除外して,市内の特定地域に関連するものを抽出した。数の推移については,会社によってアーカイブ化の程度に差があると考えられ,厳密な検討は不可能である。
Q ジェントリフィケーションという言葉を使うだけで,ネガティブな印象があるのではないか。
A(池田) ポートランドの事例では,アフォーダブル住宅の関係からネガティブに捉えられていた。京都市については,ゲストハウスとして利用されることで町家が保全される点でプラスの側面がある。ただし,人が居住しない場が増えることで,地域住民は不安を感じ,地域コミュニティが薄れて,祭に関わる人が減少するなどのネガティブな側面もある。
A(松尾) インターネット検索やロンドンの既往研究を見る限り,必ずしも否定的なニュアンスがあるわけではない。左派系のメディアでは,立ち退きや地域の変化に関する文脈で用いられるが,不動産に関する記事では,資産価値が上昇したという書き方もあり,捉え方は様々である。アカデミックな研究でも同様であり,ジェントリフィケーションそのものよりも,立ち退きや行政のスタンスなどが問題であり,地域の価値が上がることや雰囲気がよくなることについては,価値判断はそもそもできないのではないか。
A(長野) グリーン環境ジェントリフィケーションは,ジェントリフィケーションの善悪の価値判断をゆさぶるものであると考えている。公園ができる過程で周辺の地価が上昇し,公園にアクセスできない人が増える状況がある。また,アメリカであれば,Bike lanes are white lanes(自転車道は白人のためのもの)という言葉が用いられ,自転車道の白人化に対して黒人の人たちが反対するという動きもある。今回報告した事例は,何を起点にジェントリフィケーションを考えるのか,従来のジェントリフィケーション研究における排除の論理をゆさぶるものであると考えている。
Q ジェントリフィケーションではその地域を誰が利用するかが問題であり,住民の上方変動を丁寧に把握する必要はないのではないか。
A(池田) 京都の事例では,ゲストハウスができることに伴う変化が議論の焦点となる。町家がゲストハウスに変わることで,既存の住民の生活空間が狭まり壊されてしまうため,ますます住民が減少してしまう。
A(松尾) イギリスの事例を見る限り,ジェントリフィケーションのバロメーターとして,インナーシティにミドルクラスが入り地価が上昇するというのは,狭義の古典的な定義である。現在では,プラネタリージェントリフィケーションなど第三世界でも適用できる概念になっており,適用の対象もインナーシティには限定されない。立ち退きなどへの言及があやふやであっても,ジェントリフィケーション研究とされる論文が既に多くあることから,古典的な定義で示されている主要素に一つでも関係してればジェントリフィケーションとなるのが現状ではないか。
A(長野) ジェントリファイアーが何かを作り,そこに住む人々を追い出すというジェントリフィケーションのストーリーがあるとすると,公園は住民が求めているものであるとはいえ,確かにジェントリフィケーションの危険がつきまとうことになる。しかしそのなかでも,よりよい生活をするために,住民が自ら行動することに注目することが重要であると考えている。
Q まちづくりとジェントリフィケーションとの差は何か。例えば,まちづくりで,遊休不動産をもとに新しいビジネスが立ち上がり新しい人々が来る。ジェントリフィケーションもはじめはそういうものであったが,富裕層の転入・来訪のなかで行き過ぎた現象が生じるようになったものと捉えることができるのか。
A(長野) 今回の事例ではまだ評価できない。市民団体の考えに近い公園はできたが,今後,住宅市場がどう変化するか,安価な住宅の建設が実現されるのかは不明であり,まちづくりがジェントリフィケーションにからめとられていくのではないかと考える。
Q ポートランドの場合,住民の運動として,ジェントリフィケーションを住民がいかに利用するかというものであったと考えられるが,京都やロンドンの動きはポートランドと比べて何が違うのか。
A(長野) ゲストハウスや小売店は特定の層がアクセスするが,公園は語られ方が異なるのではないかと考えている。また,公園にも多様性があり,排除の空間としての公園も成立する。カリーの場合,包括的に,マイノリティの集まる地区を盛り上げるというものであったと評価した。
Q 公園を作ることのリスクというが,立ち退きがジェントリフィケーションの最も重要なものであるとすれば,解決不能ではない。立ち退きを迫られる人たちに十分な補償がされれば,都市経済学的には問題は生じない。ポートランドの場合,コミュニティの活性化や地域開発に関する問題であり,ジェントリフィケーションの現象ではないと考える。
Q まず,補償すればよいというのはもっともに聞こえるが,ニューオーリンズでの水害では,持ち家所有者以外への補償は十分なものではなかった。その点で,立ち退かざるを得ない人々への視点が求められる。次に,松尾氏の発表に関して,本来のミドルクラスは中小の工場主や商店主であることから,ミドルクラスとニューミドルクラスを区別する必要がある。また,今回の発表の共通点は,アンティディスプレイスメントをどう考えるかにある。ショアディッチ&スピタルフィールズの住民も,ユダヤ人からバングラデシュ人へと大きく変化した。エスニシティをどう考えるかがポイントではないか。
A(松尾) 立ち退きが起こった時,補償がない場合には批判が巻き起こる。また,公営住宅の建て替えにより家賃が上昇して立ち退きが起こり,自治体もそれに対して配慮しないという事例があり,そうしたディスプレイスメントも生じている。

■おわりに
今回は,ジェントリフィケーションを議論の中心に据えつつ,それぞれ対象となる地域や事象が異なり,また研究の視点にも違いがあったことから,共通点・相違点も含め,活発な議論が展開された。今後のジェントリフィケーション研究の深化・多様化が期待される充実した報告会となった。また,研究報告終了後,同志社大学の今出川回帰に伴う変化を観察するショート・エクスカーションを実施した。マンションの増加やゲストハウスに改修された京町家,景観整備された小川通など,3名の報告に関連する事象を現場で確認し,参加者の理解が深まったものと想像する。なお,同じ日に放映された「ブラタモリ」の対象地域が京都市西陣地区であり,エクスカーションでの訪問地がいくつか紹介された。最後に,報告会の会場の手配やショート・エクスカーションのルートの紹介などで同志社大学の二村太郎氏の協力を得た。ここに記して感謝したします。
(参加者:27名,記録:桐村 喬・山神達也)


2019.05.23  Comment:0
日時:2018年11月24日(土)10:30~12:00
※人文地理学会大会部会アワーとして開催

奈良大学L棟2階
(〒631-8502 奈良市山陵町1500)

テーマ:人の流動と都市圏

研究発表:ネットワーク科学・情報科学による人流解析の可能性  藤原直哉(東北大)

司会:桐村 喬(皇學館大)

趣旨:
都市圏における人の流動に関しては,従来パーソントリップ調査の結果データが活用されてきたが,より詳細な分析ができるように,パーソントリップデータを加工したものや,全く別の方法で収集されたデータも研究利用できるようになり,「人流データ」として活用が図られている。都市における人々の活動は複雑であるが,ネットワーク科学や情報科学などの分野で開発された手法によって人流データを解析することにより,これまで明らかではなかった法則性が明らかになりつつある。今回は,これらの分析手法により見えてくる,都市における複雑な動的構造について議論したい。

連絡先:桐村 喬(皇學館大) E-mail: t-kirimura[at]kogakkan-u.ac.jp

<報告要旨>

■ネットワーク科学・情報科学による人流解析の可能性
藤原直哉(東北大学大学院情報科学研究科)
近年,いわゆる「ビッグデータ」と呼ばれる,大規模かつ高精度なデータが利用可能となりつつある。このようなデータは,理工系の諸分野のみならず,これまでデータの精度等の問題により定量的解析が困難であった人文・社会科学において大きなインパクトがあると考えられる。
地理学においては様々なデータの分析が重要であるが,その中でも,人流は都市における人々の活動を反映したデータであり,その解析によって,居住地や勤務地などの人口分布のほか,通勤流動など動的な都市機能を明らかにすることができる。取得可能な人流データは,携帯電話の普及に伴ってこの10年ほどの間に大きく変化した。例えば,GPSデータによって得られる位置情報の経時変化によって個人レベルでの流動が得られる。また,通話履歴のデータからも,通話者が使用した基地局の情報を利用して位置情報を得ることができる。これらのデータは,利用者の分布にバイアスがある,プライバシーに十分配慮する必要がある,などの問題点がある。しかし,これらのデータから推定された人口分布や人口流動量などが国勢調査やパーソントリップ調査などのデータと強く相関することが知られている。さらに,災害時のような特別な状況下におけるデータもほぼリアルタイムに取ることが可能であるため,これらの状況でのデータ解析や最適な避難経路の提案など,従来のデータでは不可能であった新たな解析・応用の可能性を秘めている。
このような大規模なデータは極めて複雑な相関関係を含んでいるので,データ規模が大きくなるにつれて,その相関関係を明らかにするための新たな解析手法を開発する必要がある。本発表では,近年開発が進んでいる,ネットワーク科学や情報科学に基づく解析手法を,人流データなど地理学に関連したデータに対して適用した結果を報告し,特に地理学における示唆を議論した。
まず,複雑ネットワークの概観を解説した。ネットワーク(グラフ)は,ノード(バーテックス)およびノードを接続するリンク(エッジ)からなる系であり,数学や社会学などの分野において長い研究の歴史があるが,20世紀末に,スモールワールド性やスケールフリー性などの性質を多くのネットワークが共通して持つことが発見された。これらの性質を持つネットワークは複雑ネットワークと呼ばれ,非常に多くの研究が行われている。地理的な要素を含んだ系においても複雑ネットワークの研究は盛んにおこなわれている。本発表では,世界の航空網の旅客流動のネットワークと世界的な感染症拡大の空間的パターンとの関連や,電力網とインターネット網のような異種のネットワークの相互作用によって大規模停電が引き起こされる例を紹介した。
人流データのネットワーク解析の一例として,本発表では,人流データにネットワークコミュニティ分割(グラフクラスタリング)を適用した結果を報告した。対象となる地域をいくつかの小地域(圏域)に分割することはさまざまな分析・研究において重要であり,米国ではUnited States Metropolitan Statistical Areas,日本では都市雇用圏のように,各国でそれぞれ圏域構造の同定手法が提案されている。ここでは,ネットワーク科学と大規模な人流データを用いて,このような圏域構造を定義する手法を提案する。
解析の流れは以下のとおりである。まず,対象となる地域を,いくつかの小地域に分割する。分割単位には,日本であれば,地域メッシュなどを使用する。次に,人流データを用い,小地域間の流動数を計測する。GPSデータなどのようにトリップが定義されていないデータに対しては,前処理としてトリップを検出し,各トリップを集計する必要がある。
このようにして得られた小地域間の流動量を,重み付きネットワークとみなし,ネットワーク解析の手法を適用する。本発表では,Map Equationと呼ばれる手法を適用した。
その結果,様々なデータに共通して,空間的に連結したコミュニティ構造が得られた。構成法より明らかなように,このネットワークは地理的な距離の情報を陽には用いていない。それにも関わらず空間的に連結したコミュニティが得られたという結果は,交通機関が発達した現代においても人々の移動量が距離に依存していることを示唆している。都市内部においては,人流は十分に混合しており,コミュニティのような構造は検出されない可能性も考えられるが,データ解析の結果はそのような予想には反するものであった。圏域の境界は自治体の境界と一致する場合が多いが,一致しない場合も多数見受けられた。そのような状況では,境界において人流を制限する山や川などの地形的要素が存在しない場合が多い。
また,ジオタグ付きTwitterデータをtf-idfを用いて,時空間的な小領域において,その領域を特徴づける単語を抽出した。ジオタグ付きツイートデータは,位置情報から人流と関係するのみならず,つぶやいた内容から人々の活動に関する手掛かりを得ることができる。解析の結果,「京都」「金閣寺」「清水寺」など,季節に依存しない地域を特徴づける単語のほか,「桜」「祇園祭」など,該当する小領域および季節におけるイベントを示す単語も抽出された。この結果は,Twitterの解析を通じて人々の流動のみならず,各地域における季節的な活動を特徴づけられる可能性を示唆する。
以上のように,本発表では,ネットワーク科学や情報科学を用いた人々の流動と関連するデータ解析の手法について報告を行った。特に,大規模かつ要素が強い相関を持つデータの解析には新たな手法の開発が欠かせない点,また,これらの解析は地理学に対しても新たな知見を与える可能性がある点などを指摘した。検出されたコミュニティ構造は,様々な分野で応用可能であると考えられる。例えば,公衆衛生においては,コミュニティ構造は感染症の拡大対策などの政策を適用する地域的単位と考えることができる。近年発展が目覚ましい,深層学習などの機械学習手法の応用も重要であると考えている。地理学的に重要な問題へのこれらの手法の適用,および適用するデータの検討などの問題は今後の課題である。

■討論
Q:トリップデータをクラスタリングする際,個々のトリップを独立したものして扱う場合と,目的を持つ連続的なものとして扱う場合とがある。今回は個々のトリップを独立したものとして分析しているが,結果として,どこかに出かけた後の移動の回遊性がクラスタリングされている面があるように見受けられる。この点についてどう考えているか。
A:ご指摘の通り,人の流動には周期性があり,トリップ空間には相関がある。今回の手法はトリップ間に相関がないことを前提にしており,個人単位の流動を捉えきれていない。ただし,人の流動を介して感染症が運ばれるときなどには,今回の結果と近いことが起こっているであろう。また,長時間の相関を入れた手法が開発されており,その適用可能性を探るという方向性がある。加えて,ネットワークに時間の情報を入れることも可能である。その場合,同じ場所でも時間によって所属するコミュニティが異なるなどの結果が得られると予想される。
Q:人間関係のネットワークにおける地理的要素を考えると,多くの友人は地理的に近い距離にいるが,遠距離にも友人がいる。ネットワーク科学では,どのように定量化できるか。
A:友人数の分布を距離の関数として求めることで定量化可能で,距離とともに友人数は減少すると考えられる。しかし、遠距離の友人が存在することによって,スモールワールドネットワークのように小さな平均距離が実現されていると考えられる。
Q:地理学では交通網の発展などを検証する際にネットワーク分析が行われてきたが,地理学分野でのネットワーク研究はどのように理解しているか。
A:例えば,イギリスだとUniversity College Londonの研究グループが,複雑系の観点から地理的なシステムを精力的に研究を行っている。道路ネットワークの解析で,中心性指標が混雑や都市の発展の歴史と関連することが指摘されている。地理学でもネットワーク解析が古くから存在することは,ネットワーク的な視点の有用性を示唆していると考える。
Q:人の流動をもとに各地区をグループ化する作業をコミュニティ検出と呼んでいるが,ネットワークにもとづく地域区分などと表現すべきではないか。
A:今回用いた手法がネットワーク科学の分野でコミュニティ検出と呼ばれていることから,ここでもそのまま用いたが,社会的なコミュニティと同じ用語になっており,確かに紛らわしい。何か別の表現がないか,今後の検討課題としたい。
(参加者:18名,司会:桐村喬,記録:山神達也)
2018.10.29  Comment:0