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日 時: 2022年11月20日(日)15:00~16:30(大会部会アワー)
  ※2022年人文地理学会大会(佛教大学)2日目の部会アワーとして開催予定

会 場:佛教大学 紫野キャンパス,1号館4階 1-408

テーマ:『田園回帰がひらく新しい都市農山村関係』をめぐる農村の現場と都市

趣 旨:
 2010年代に入り,都市から農山村への移住に対する関心が高まりをみせるとともに,都市と農山村の関係も変化しつつあるという。この新しい都市と農山村の関係を「田園回帰」というキーワードのもとに多面的に検討した筒井一伸編『田園回帰がひらく新しい都市農山村関係―現場から理論まで―』(ナカニシヤ出版,2021年)は,多数の書評が執筆されただけでなく,本書をはじめとする一連の研究業績をもとに編者の筒井一伸氏が農村計画学会賞(論文)を受賞するなど,地理学やその関連分野に大きなインパクトを与えた。今回の研究部会では,同書の編者・執筆者による本書出版の趣旨や書評での論点についての紹介とコロナ禍における地方移住の動向などに関する報告をもとに,田園回帰に関する理解を深めつつ,都市―農山村関係に関する都市地理学からのアプローチや農山村社会の変容過程からみえてくる都市社会のあり様などについて議論する。

報告者・題目

■筒井一伸(鳥取大学):田園回帰と都市農山村関係―移住・コミュニティー・関係人口―

■嵩 和雄(國學院大學):新しい人の流れをつくる―コロナ禍での動向と課題―

連絡先:山神達也(和歌山大学)  E-mail: yamagami [at] wakayama-u.ac.jp
2022.11.07  Comment:0
日 時: 2021年7月17日(土)14:00~17:00

会 場: オンライン(Zoom)※要事前申込み(方法については下記をご覧ください)

テーマ: 不動産関連データの都市地理学

趣 旨:
 近年,データの公開・流通と利活用が政府や行政だけでなく,民間でも積極的に展開されている。不動産関連のデータも同様であり,都市地理学の隣接分野ではデータの研究利用が進んでいる。また,都市地理学で長らく用いられてきた,国勢調査や国土数値情報をはじめとする既存の統計データも,長期間の蓄積が進んだことで,新たな活用・分析の方法が提案されるようになってきている。そこで,今回は、不動産取引や建物,地価など,不動産に関わる様々なデータをめぐる都市地理学的な分析事例を紹介するとともに,不動産関連データの都市地理学的な利活用の方向性についての展望を示したい。

報告者・題目:
■豊田哲也(徳島大学):全国市町村における所得の地域格差と住宅地価形成-地価公示データのクロスセクション分析
■上村要司(株式会社Geo Laboratory 代表取締役):近畿圏の既存住宅市場における流通空き家の地域特性-レインズデータを活用した分析
■上杉昌也(福岡工業大学):グローバル都市における住宅市場と居住者特性の変化-不動産取引データを活用した小地域分析
■桐村 喬(皇學館大学):大阪府吹田市における共同住宅単位の年齢・世帯構成の長期的変化-国勢調査調査区資料の活用

申込み方法:
参加をご希望の方は,下記より参加申込みをお願いいたします(締め切り:2021年7月14日)。申し込みいただいた方に,Zoomの参加用URLなどを7月16日までにお送りします。
https://forms.gle/9FGDXcC9jujgcEj4A

連絡先: 桐村 喬(皇學館大学) t-kirimura [at] kogakkan-u.ac.jp
※お手数ですが[at]を@に置き換えてください。

■全国市町村における所得の地域格差と住宅地価形成―地価公示データのクロスセクション分析―
豊田哲也(徳島大学)
 所得格差と地価形成に関する三つの視点,①地代理論に基づく地価形成原理,②地域格差概念の二つの定義,③資本所得がもたらす格差拡大仮説にもとづき,市町村を集計単位とする住宅地価関数を構築し,最新のデータによる検証をおこなった。
 地価の実証分析には大きく二つのアプローチが存在する。不動産の鑑定評価手法である収益還元法は,土地が生み出す期待収益(地代)を利子率で割り引くことで現在の理論地価を導くものである。一方,ミクロスケールの空間分析として発展したヘドニック法は,交通アクセスや周辺環境など個別立地点の属性が地価にどう影響しているかを推定する。前者は演繹法的アプローチ,後者は帰納法的アプローチといえよう。本研究の独自性は,収益還元法の考え方に基づきつつヘドニック法と同じ重回帰分析の手法を用いることで,地価と地代の本質的な規定関係を検証する点にある。
 近年の地価動向を見ると,東京,大阪,名古屋の三大都市圏で2014年以降上昇に転じたが,地方圏では長期下落に歯止めがかからない。地価の推移は経済活動の指標であり,その二極化現象は地域経済の格差拡大を反映していると考えられる。地域格差の把握には,「水準の地域間格差」と「規模の地域間格差」という概念の区別が重要である。前者は人口や世帯当たりの所得額の地域的不均等,後者は人口や世帯の地域的偏在と集中によって表される。これら二つの地域格差が現実の地価動向にいかなる影響を与えているかは,政策的に重要な論点である。
 最近の格差研究の新たな展開として世界的な注目を集めたのが,フランスの経済学者トマ・ピケティの『21世紀の資本』である。彼は「資本収益率(r)>経済成長率(g)」,すなわち労働所得より資本所得が格差の拡大をもたらす根本的な原因であることを主張した。しかも,世界各国の膨大な税務資料を用い長期にわたる所得格差を実証的に分析した点で画期的な研究成果といえる。本研究ではこの仮説と手法を地域分析に導入し,労働所得と資本所得(株式や土地の売却益)のいずれが地価形成に寄与しているか検討をおこなう。
 理論上,交換価値である地価は使用価値である地代によって規定され,地代は土地利用強度と地価負担力によって決定される。本研究では集計レベルで利用可能な代理変数を用いることとし,前者を面積当たり世帯密度(世帯数/宅地面積),後者を地域の所得水準(総所得/世帯数)で表す。住宅地価は,2013~2020年の地価公示から抽出した全国1.5万地点のデータを用い,1331市町村について平均値を求めた。総所得額は,総務省自治税務局の「市町村税課税状況等の調」から「課税対象所得」を用いる。世帯数は,住民基本台帳に基づく世帯数(外国人を含む)を採用する。宅地面積は,「固定資産の価格等の概要調書(土地)」を参照した。
 分析では,市町村別住宅地価を目的変数とし,上記の世帯密度と所得水準を説明変数とする地価関数(モデル1~3)を構築し,クロスセクションの重回帰分析をおこなった。その結果,いずれのモデルにおいてもデータの全変動の約80%を説明できた。地価分布の二極化現象は,人口や所得の東京一極集中,地方圏における人口減少と経済的衰退がもたらす地域格差拡大を相乗的に反映したものと考えられる。また,住宅地価形成に与える影響力は,土地利用強度(世帯密度)の方が地価負担力(所得水準)より大きいが,その価格弾力性は所得水準の方が大きい。さらに,資本所得比率が高い地域ほど住宅地価は高く,資産効果(キャピタルゲイン)を通じて地域格差のさらなる拡大を招いていることが示唆された。

■近畿圏の既存住宅市場における流通空き家の地域特性―レインズデータを活用した分析―
上村要司(株式会社Geo Laboratory)
 大都市圏における急速な高齢化や将来的な世帯数の減少に伴い,住宅需要の停滞や増加する空き家への対応が課題となっている。深刻化する空き家問題では,管理不全に陥った放置空き家対策に重点が置かれるが,空き家を未然に防止する過程では既存住宅流通市場が重要な役割を果たす。空き家に関する既往研究では,公的統計や実態調査に基づく分析が多いが,住宅市場で長期間滞留する流通空き家の実態については,研究の蓄積が進んでいない。本報告では,首都圏に次いで既存マンション流通が活発な近畿圏(2府4県)を対象に,市場で長期間売れ残りとなった空き家の地域的差異やその多寡の要因について,不動産取引データとジオデモグラフィクデータを用いた分析例を紹介する。
 近畿圏ではマンションストックの拡大とともに流通量が増加しているが,都心から離れた郊外やインナーシティでは,売却期間の長期化や値下げが目立つ。そこで,不動産取引データとして近畿レインズ(不動産流通機構)が保有する2010年1月から2015年12月までの売買事例の非集計データを用い,既存マンションの市場滞留期間と価格開差率を把握した。前者は住宅の売出しから成約に至る日数を,後者は売出価格から成約価格までの値引幅を示し,これらと流通空き家の属性(専有面積や築後年数,町字単位の住所,最寄駅への距離等)や人口・世帯構成,住宅事情等の地域特性を示すジオデモグラフィクスとの関係を分析することで,デットストック化しやすい地域を把握した。ジオデモグラフィクデータについては,国勢調査や購買行動データ,年収階級別推計世帯数等に基づき,全国約20万の町丁字を14グループ(Mosaic Group)の居住者特性に分類したExperian Mosaic Japan 2010を用いた。
 分析では,レインズデータに基づく物件属性をレベル1,Mosaicデータに基づく地区類型をレベル2とするマルチレベルモデルを採用した。これにより,物件属性と地区類型の各説明変数が,需要の強弱を示す成約価格と価格開差率,空き家の発生しやすさを示す市場滞留期間の目的変数に与える影響を推定した。同モデルでは,一般的な重回帰分析と異なり地区類型ごとに切片の変化が捉えられ,物件属性の影響を制御した上で近畿圏全体の平均と類型ごとの残差を捉えることで,例えば価格水準が低く売却期間が長期化しやすいといった地区の把握が可能となる。
 市場滞留期間が長引く傾向にある類型が該当する寝屋川市や堺市,尼崎市等の町字では値引幅は小さいが,一定の住宅需要が認められるため値引幅の拡大や売出価格の調整により早期の売却は可能と考えられる。一方,同じ滞留期間が長い神戸市垂水区や長田区,大阪市東淀川区,滋賀県野洲市等の町字は価格開差率(値引幅)が大きく,流通空き家が発生する可能性が高い。高齢化が進む郊外やインナーシティでは従来の現状有姿取引では流通空き家の解消は困難と考えられ,リモデルやコンバージョン等による売却や賃貸化により,地区内外の購入需要を喚起する必要があるとみられる。
 分析例が示すように,不動産取引に関する非集計データとジオデモグラフィックデータを活用することで,住宅政策(空き家対策)での優先地区の選定指標を作成する可能性が指摘される。近年,民間ポータルサイトが提供する不動産物件の非集計データの取得も容易となり,都市別や小地域単位など任意の地域で様々な分析が可能となっている。データの収録期間や広告価格の性質に留意する必要はあるが,価格や面積,間取り,築年等の住宅属性と,地理的特性を示す所在地,沿線駅,徒歩分数等の立地属性を組み合わせた分析が可能であり,都市地理学においても更なる活用が広がるものと考えられる。

■グローバル都市における住宅市場と居住者特性の変化―不動産取引データを活用した小地域分析―
上杉昌也(福岡工業大学)
 近年,世界のグローバル都市では,都市内部での居住者の社会経済的地位による住み分け(セグリゲーション)が進展し,また住宅価格の高騰も問題となっている。従来のセグリゲーション研究は人口に基づくアプローチを中心に行われてきたが,理論的には「居住」を通じて住宅市場とは密接不可分の関係にある。そこで本報告では,2000年以降のグローバル都市におけるセグリゲーションと住宅市場の空間形態の変化について,ニューヨーク,ロンドン,東京(東京都区部)を対象に,各国センサスデータや不動産取引データを用いて比較する。
 まず,それぞれの対象都市における社会経済的なセグリゲーションの動向については,これまでの発表者らの研究において,高所得職業労働者(管理・専門職就業者)割合の増加が,都市の空間形態に影響を与えることが示されている。1980年代以降,いずれの都市でも高所得職業労働者の都心集中という共通点がみられる一方で,ニューヨークとロンドンは東京以上にセグリゲーションが進行し,貧困の郊外化も指摘される。
 続いて,これらの点を住宅市場の動向から考察するため,各国でオープンデータとして公開されている住宅売買取引に関する非集計データを利用して小地域単位の平均住宅価格を算出した。ニューヨークでは,市財務局が「Property Assessment Data」として2003年以降の売買取引価格情報を公開しており,ここでは居住用不動産Tax Class 1 & 2を対象にZipcode単位で集計した。またロンドンでも,英国土地登記所が「Price Paid Data」として1995年以降の売買取引価格情報を公開しており,ここではWard単位で集計した。さらに東京については,「不動産取引価格情報」(国土交通省)により,利用可能な2005年以降の中古マンションおよび土地と建物(住宅用途)について,東京都市圏PT調査の小ゾーン単位で集計した。
 小地域単位の平均住宅価格分布の変化は,それぞれの都市で特徴がみられる。ニューヨークでは,2010年までの約10年間に平均価格が2倍以上になった地区がマンハッタンから,これまでもジェントリフィケーションが指摘されるブロンクス北西部に広がっており,さらに2020年までの10年間には平均価格が2倍以上になった地区はブロンクス北西部から市全体に広がっている。ロンドンにおいては,2000年代の最初の10年間に縁辺部を除く広い範囲で平均価格が2倍を超える地区が多くみられたが,2010年以降はとりわけテムズ川沿いの中心部周辺で伸びが大きい地区の集中がみられるようになっている。また東京では,2005年以降のデータしか入手できないこともあり,2010年までは都心周辺や中央区や江東区周辺の臨海部など限られた地域で平均価格の増加がみられるだけであったが,2010年からの10年間では山手線沿線を中心に2倍を超える地区が目立つようになっている。なお,各国の管理・専門職就業者割合の分布と平均住宅価格の比較では,いずれの都市ともに強い相関がみられ,例えば2015年の東京では両者の相関係数は0.61と高い水準にある。
 本報告は,都心周辺部での住宅価格の高騰と管理・専門職の集積化との関連性を強く示唆するものであるが,両者の因果関係や,グローバル都市の中でもニューヨーク・ロンドンと東京との違いを生む要因など,さらに追及すべき点は多く残されている。それでも不動産データの特徴として,多くが全国規模で任意の空間スケールで分析可能であり,他のデータとの重ね合わせが可能で即時性も高いデータであることなどを踏まえると,セグリゲーションなど従来の都市地理学テーマの再検討や,小地域の社会経済的特性の代理変数としての活用,地域比較研究における有用性が指摘できる。

■大阪府吹田市における共同住宅単位の年齢・世帯構成の長期的変化―国勢調査調査区資料の活用―
桐村 喬(皇學館大学)
 晩婚化や団塊世代の高齢化の進行に加え,1990年代後半以降の人口回復傾向などにより,都心部の単身世帯の年齢層は多様化している。住宅の面でも変化が生じてきており,1990年代後半以降は従来から多かった賃貸共同住宅だけでなく分譲共同住宅の供給も進み,既往研究からはそれらへの一定数の夫婦のみの世帯や単身世帯の入居も確認されている。分譲共同住宅では居住者の入れ替わりが少ないと考えられ,将来的には,都心部の急速な高齢化と単身世帯の急増が予想される。本発表では,長期的視点から大都市圏の共同住宅居住者の年齢・世帯構成の変化パターンを明らかにすることを目的とし,継続して共同住宅が供給されてきた大阪府吹田市を対象として,共同住宅ごとの居住者特性の時系列変化と,供給当初の居住者特性の長期的推移について分析した。
 共同住宅単位の居住者特性を把握するために,1975年以降の国勢調査結果についての調査区単位のデータを利用した。調査区は約50世帯ごとに設定されており,一定戸数以上であれば共同住宅単位の分析ができる。調査区単位のデータは調査区別集計と基本単位区別集計から得られるが,2005年以降は集計項目が限られている。そこで,調査区別に65歳以上人口などが集計された標本調査基礎資料を活用して,2005年以降のデータ不足を補った。
 共同住宅については,棟ごとに不動産情報ウェブサイトの情報などをもとに分譲・賃貸・社宅などの住宅種別に分類した。そのうえで,住宅種別が同一で隣接し,供給時期が近いものは1団地としてまとめ,棟・団地単位で共同住宅の居住者特性を分析することとした。そして,居住者特性の長期的変化を観察するために,15歳未満・年齢不詳人口比率,65歳以上人口比率,単身世帯比率,平均世帯規模の4指標の居住者特性を,対象とした1975~2015年までの各国勢調査年の棟・団地単位で算出し,Ward法によって6類型に分類した。
 第一の分析として,1960年代後半から1980年に供給された共同住宅に注目して,それらの分布や,棟・団地ごとの1975~2015年の居住者特性の変化について類型を用いて検討した。まず,民間・公団・公社分譲における居住者特性の変化をみると,1975・1980年時点では世帯規模の大きい類型が多数を占めたが,時間とともに世帯規模が縮小し,高齢化する傾向が確認され,2015年には大部分が高齢者の多い類型に変化した。公団・公社・公営賃貸では,分譲と同様であったが,社宅と民間賃貸では,単身世帯の多い類型か,世帯規模の大きい2類型のいずれかのまま,あまり変化しない傾向が確認された。社宅は定年による年齢制限があり,民間賃貸も核家族向けの場合は分譲への住み替えが起こりやすく,居住者特性に変化が乏しいものと考えられた。
 第二の分析として,供給から5年以内の棟・団地における居住者特性に注目し,その推移を検討した。分譲については,1990年代前半までは世帯規模の大きい類型が中心であったが,1990年代後半以降は,それよりもやや規模が小さい世帯の類型も多くなり,単身世帯や高齢者が多い類型も確認されるようになった。一方,賃貸については,1980年代後半以降は単身世帯の多い類型が主流であり,2000年代以降は,世帯規模の大きい類型はほとんどみられなくなった。また,2010年以降,年齢不詳および単身世帯の多い類型が民間賃貸で大きく増加してきていることも指摘できた。
 2つの分析によって解明された共同住宅における居住者特性の長期的変化のパターンからは,従来から共同住宅の供給が継続し,特に2000年代以降に民間分譲や民間賃貸の供給が進んだ地域においては,近い将来,地域全体の急速な高齢化や単身世帯比率の大幅な上昇が生じるものと予想された。

■討論
Q ジオデモグラフィクスによる社会地区類型ごとに空き家率に差があるとのことだが,ジオデモグラフィクスは空き家率の改善などに活用できるのか。
A(上村) 国土交通省では,町丁別や細かいメッシュ単位で空き家率を推定する取り組みがある。また,空き家発生地域を予測し,行政サービスなどの優先順位を決める場面で活用する取り組みもある。
Q 地方都市では地価の空間分析は困難である。不動産関連データと関連させるなどの方法はないか。
A(豊田) 地価公示データで全体的な動向は把握できるが,地方都市内のミクロな分析は難しい。また,地方都市や過疎地の空き家と大都市の流通空き家では発生メカニズムが異なるため,前者では流通空き家データを活用できるか疑問である。
A(上村) 大都市圏での空き家の増加を止める手立てとして流通空き家に注目しており,地方都市での空き家の発生については着眼点が異なる。
A(豊田) 日本の住宅政策は新築重視,持ち家優遇という仕組みで動いている。空き家問題への対応では,都市再編やコンパクト化の概念が不可欠と思う。
Q 千里ニュータウンにおける外国人集住は,大勢に影響を与えない軽微なものと捉えてよいのか。
A(桐村) 外国人数は小地域単位なら把握できるが,共同住宅単位では把握できないため,分からない。
Q 特定の地域における住宅価格について,平均値などの代表値を用いて分析することが多いが,地域の単位などで注意すべきことに何があるか。
A(上杉) データの特徴として,マルチスケールで考えることができる。物件単位で考えるところと地域の単位との関係は難しい問題であるが,近隣での空間的な波及効果を考える場合や都市対郊外の構図において都市圏単位で考える場合など,分析内容に応じたスケール観が重要である。
Q グローバル都市での不動産価格の上昇について,国外からの投資の影響を,今回のようなミクロなデータから把握したり推計したりすることは可能か。
A(上杉) 今回のデータでは国外からの投資や移民の影響を分離して検討することはできないが,重要なポイントであるので,他のデータと組み合わせるなど,その点を明らかにできる方法を考えたい。
Q 国際的に投資が活発化していることが,ジェントリフィケーションを考えるうえで重要である。ミクロなデータから国際的な投資を推計できると,グローバル都市研究がさらに進展すると考えられる。
A(豊田) ジェントリフィケーションは人とマネーのフロー両面から考える必要がある。これまで大都市の不動産市場において,支払い能力のない人が追い出されることが問題視されてきた。今回の分析で,大都市ではキャピタルゲインの集中と地価上昇が相互に関係していることがわかる。伝統的な地理学は土地利用や景観など可視的現象の空間把握にとどまり,マネーのダイナミズムへの注目が不十分であったと思う。国内経済だけでなくグローバル資本主義下での都市の変化という視点も求められよう。
(参加者:31名,記録:桐村 喬・山神達也)
2021.05.07  Comment:0
日 時: 2019年11月17日(日)16:10~17:40(大会部会アワー)
  ※今年は2日目の一般研究発表終了後に予定されています

会 場: 関西大学千里山キャンパス

テーマ: 都市計画学と都市地理学の対話

趣 旨:
 複雑化する現代の都市圏研究には学際的視点の重要性がいっそう高まっている。本
研究部会では隣接領域から第一線の研究者を招き、2016年度「都市経済学と都市地理
学の対話」(中村良平・岡山大学教授)、2017年度「都市社会学と都市地理学の対
話」(町村敬志 ・一橋大学教授)を開催してきた。今回は、都市計画学の分野にお
けるコンパクトシティ研究の第一人者であり、国の政策形成にも深く関与する谷口守
氏を招き、コンパクトシティ政策の目的や方法について話題提供いただき、都市圏の
将来デザインと都市構造の再構築に向けた可能性について議論を深めたい。
 なお、本研究部会では、2009年7月に中国四国都市学会および徳島大学と共催で、
公開シンポジウム「地方都市の再生-郊外展開かコンパクトシティか-」を開催して
おり、藻谷浩介氏(当時・日本政策投資銀行)による基調講演をもとに、都市地理学
研究者が中心市街地活性化や大型店立地政策との関係について議論をおこなった。今
回の企画は、それ以降10年間のコンパクトシティ政策を歩みを検証し、都市の将来を
展望する機会となるだろう。

研究発表:
コンパクトシティ政策の課題と再考
 -生活習慣病化する都市に向き合う-
・・・・谷口 守 (筑波大学システム情報系社会工学域教授)

コメンテータ:豊田哲也(徳島大)

連絡先:豊田哲也(徳島大)E-mail: toyoda.tetsuya[at]tokushima-u.ac.jp

■コンパクトシティ政策の課題と現実
―成人病化する都市とおりあう―
谷口 守(筑波大学)
1)はじめに
 地理学は極めて重要な学問分野であるが,社会全般においてその認識が不十分である。特にコンパクトシティなど都市構造に関する議論は地理学に深く関わる領域であり,都市計画や地域政策関係者は日頃から地理学の素養を高めることが求められる。かつて発表者は博士論文として,京阪神都市圏を対象に拠点に相当する「都市機能集積地区」を設定し,交通ネットワーク整備を通じた活性化を定量的に論じた。その成果は25年の歳月を経て,2014年施行の立地適正化計画における「都市機能誘導地区」に投影されたが,現在まで取り組んできた一連の研究は地理学の多くの知見に基づいている。
2)コンパクトシティ政策導入まで
 都市のコンパクト化による効果は多岐にわたり,人口減少社会において避けては通れない課題である。欧州では1987年の国連ブルントランド報告以降,各国の主要政策として採用された。その論拠となる研究として,Newmanらによる都市居住密度と自動車燃料消費の関係図がよく知られる。わが国においては1999年に谷口らが,市街化区域人口密度が倍になると一人当たりガソリン消費量が半減することを定量的に示した。ただ,わが国では該当する法律がないという法律至上主義や,計画と規制の判別が理解できない自由経済主義の中で,コンパクト化政策が国政レベルで採用されない状況が続く。むしろ青森や富山など地方都市の方が国よりずっと先に動いていたというのが実情であった。
 主に工学系の学会や社会資本整備審議会での活動が実り,2007年にガイドラインとしてようやくコンパクト化政策が推奨されたが,法律として日の目を見たのは2012年(エコまち法),実質的に影響力のある法律としては2014年の都市再生特別措置法の改正(立地適正化計画の導入)まで待たねばならなかった。私見では,こうした経緯は社会が都市計画に向き合わず課題を先送りにする「都市計画回避」が積み重ねられてきた結果である。その意味で過去と同じ過ちを繰り返さないためにはどうするかを真摯に考える必要がある。
3)現在の課題
 国政レベルで政策転換が計られた結果,現在では猫も杓子もコンパクト化を標榜する状況となり,中には実態が伴っていないケースも散見される。また,取り組みの多くは都市に対するカンフル剤と誤解され,無理筋の性急な成果が求められることも多い。今や社会に対しコンパクト化政策をどう伝えるかを考え直す時期に来ているのではないか。個人の利益最大化のために「都市計画回避」が支持され続けた結果,日本の都市はいわば各種の成人病に罹患しており,体質改善としてコンパクト化政策が求められている。具体的には都市の現状を循環不全,肥満化,骨粗しょう症,がんなど様々な病理に例えて示すことで,行政担当者や一般市民にとっても実像や課題と対応すべき方策が見えやすくなる。ちなみに,このような生物にたとえて課題解決を目指す学問領域をバイオミメティックス(生物模倣学)といい,都市計画以外の各研究分野では既に広く取り入れられているアプローチである。
 従来の「競争して増やす」という経済原理に基づく発想は,人口減少社会の中でそのスポットだけ黒字拡大を目指すタワー型マンションを生んだ。これは都市圏全体を生命体と見れば「がん細胞」以外の何者でもない。今求められているのはその逆の「協調して減らす」仕組みである。「官から民へ」という利潤追求型思考では各地へのがん転移が進むばかりである。旧東ベルリン地区では,公共事業として建物のボリュームを減らす減築事業がコンパクト化政策として効果を上げているが,「公共事業はすべて悪」というわが国特有の思考停止がそのような取り組みを提案すること自体を阻害している。
4)打開策を探る
 自治体職員に対する継続的な意識調査によると,本音ではコンパクト化政策は実現困難と感じている者が依然多い。ガイドラインが提示された2007年当時と,立地適正化計画が導入された2014年頃を比較すると,関連する諸制度ができたという点では改善と理解されているが,関連業務が増えて手が回らなくなったという指摘が逆に増えている。
 実際どのような具体的方策を取ればよいかという判断は自治体によって全く異なる。当然,他都市の模倣ではなく,自分の頭で考えることが重要だ。そのためには客観的な空間情報を常にアップデートし「見える化」することで,適切な判断ができる環境を整えておく必要がある。都市計画学会では,グーグルアース上で地域の空間構造が一瞬で把握できる「都市構造可視化サイト」を開発し,無償で提供している。このサイトを審議会の場で活用したところ,委員の意見が180度変化したケースもあった。このような「見える化」の推進は関連学会が協力して引き続き取り組むべき課題といえよう。
 人口減少社会では低密度に広がって住むことが不適切であるという意識が市民レベルで共有されない限り,いかなる法制化も都市拡散を止めることはできない。また,総本山である「都市計画法」が適切に改正されない現状では,法律によるコントロールという常識から一度離れることも必要である。さらに,「地方分権化」「住民主権」「官から民へ」「競争」など当然視されてきた既成概念が,一般市民のみならず一部の研究者の思考停止を招き,結果的に都市の成人病を悪化させていることをよく認識すべきである。この社会状況を糺していくためには,都市計画の専門家だけでは明らかに不足し,その対応も偏りがないとはいえない。バランスの取れた地域づくりを実現する上で,地域を研究対象に掲げる地理学者の積極的な関与と一層の行動を期待したい。

■討論
Q ある自治体で立地適正化計画の誘導施設を決める際,商業機能は不足していないため対象とならなかったが,制度上そのような設定になっているのか。
A(谷口) 自治体側の思い込みで判断が硬直化しているのではないか。中心市街地活性化政策と立地適正化政策を結びつける発想が弱く,国交省,経産省,農水省などセクショナリズムが足を引っ張っている。
Q 立地適正化の居住誘導区域の引きはどのように決めるのか。その外側で住民に不利益は生じないのか。
A 市街化区域とは異なり居住誘導区域に法的な権利の制限はない。誘導区域では今後インフラ整備を進めるため,サービスのレベルに差がつく可能性はある。むしろ重要なのは,防災の観点から都市計画の議論ができるようになったことにある。
Q 合併した自治体でバラバラな都市計画区域を見直そうという動きがあるが,周辺地域では要件を満たさないため設定できない例がある。人口減少時代において都市計画法が合わなくなっているのではないか。
A こうした事態は当初からある程度予想されたことで,地理学会として市町村合併に反対したのかが問われるだろう。都市計画法の抜本改正は2007年以来ずっと言われてきたが,2011年の震災や2014年の立地適正化以降うやむやになった感がある。
Q 歴史的景観を保全したまちづくりはどうすれば実現可能か。自己利益優先の建設や開発で法の抜け道を探すような社会的風潮は許されるのか。
A 日本の都市政策では形式的な安全性が重視され,景観への配慮が足りないと思う。また,都市整備をおこなうのは官か民かという二者択一に陥り,パブリックあるいは「共」の概念が欠けていると考える。

■コメンテーター所見
豊田哲也(徳島大学)
 部会アワーに合わせた「隣接科学との対話」シリーズは,2016年の都市経済学から,都市社会学,情報学に続いて4回目である。都市計画学は望ましい地域の将来像を議論し,そのための方策を探ることを学問的使命としている。国のコンパクトシティ政策に深く関与してきた谷口氏は,都市地理学の意義や研究上の貢献を高く評価しつつも,現状分析にとどまらず提言や行動につなげてほしいと訴えた。空洞化やスプロール化が進んだ現代日本の都市は,いわば成人病患者のような状態にあり,体質改善のためコンパクト化政策は不可避であるという比喩は説明としてわかりやすい。従来の「競争して増やす」という経済原理から「協調して減らす」という計画思想へ転換することの重要性も理解できる。ただし,規制緩和や分権化を是とする新自由主義的主張を疑い,オルタナティブな価値を追究することは,環境政策と同様の難しさをともなうだろう。都市計画学からの期待にいかに応答するかは都市地理学研究者一人一人の課題であると思われる。
(参加者:34名,記録:桐村 喬・豊田哲也)
2019.09.09  Comment:0