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第50回 都市圏研究部会
2014年5月17日(土)
於:神戸大学梅田インテリジェントラボラトリ
テーマ:大都市圏における居住と就業の地域構造変化

■京阪神都市圏と東京都市圏の人口と男女の就業地の変化-2000年以降を中心に
坂西明子(奈良県立大学)
 本研究では,京阪神都市圏と東京都市圏について,2000年代以降の都心回帰下における都市圏内部の人口変化と男女の就業地の変化とを考察した。
 使用したデータは京阪神都市圏パーソントリップ調査である。1990年の第3回調査で用いられた70の中ゾーンの地域区分を適用して,同じ地域単位で2010年までの時系列分析を行った。大阪市の人口は,2000年から2010年にかけて,その前の10年間と比べて増加に転じた。これは大阪市で働く就業者数の成長に牽引されるものではなく,より職場に近接した地域に居住するという,都心回帰による居住地選択と通勤パターンの変化によるものである。大阪市を到着地とする通勤トリップ数は,2000年から2010年にかけて大きく減少しているが,大阪市都心2区と準都心から,同じゾーンへの通勤の組み合わせは増えている。郊外から大阪市への通勤トリップ数は大きく減少した。
 従業地における就業者数は,男女で異なった変化の傾向を示している。女性の就業者数変化は人口変化と正の相関がみられる。2000年から10年間に,都心地区の女性就業者数が大きく増加した。他方,男性の就業者数変化は人口変化とほとんど関係がなく,都心を含め大阪市全体で減少している。女性は住居から近くで働く比率が高く,人口成長によって雇用成長が引き起こされる部分が大きい。2000年代には,都心地区の就業者の男性比率が大きく低下し,都市圏内部の就業者の性比の地域間格差は縮小した。一方,郊外の多くでは居住地選択の変化による人口流出超過だけでなく,そこで働く就業者の減少も同時に生じている。このような変化は郊外の経済循環に負の影響を与えることが考えられ,都心回帰と人口減少下における近年の大都市圏の構造変化を詳しく分析する必要がある。
 東京都市圏については,国勢調査報告のデータを用いて,分析を行った。2000年からの10年間に,東京の都心3区に近いほど人口増加率が高く人口の都心回帰がはっきりと現れているが,女性就業者数の増加率は都区部よりも,東京都西部,横浜市,さいたま市など,距離の近い周辺地域の方が高い。都区部の中では男女とも就業者増に転じている地域があり,都区部での男女の変化に相関がある。事業所移転,地域の開発等の影響を受けていたことが考えられ,事業所サービス業が集積する東京都区部の特徴を踏まえて,就業地変化と人口変化との関係を考察する必要がある。どのような産業が雇用を牽引しているのか産業別就業者数の変化を調べたが,2010年の国勢調査では分類不能の産業の大幅な増加という,扱いの難しくなっている点があった。
 今後は,性別産業部門別の就業者数の変化の考察,性別の通勤パターンの考察を行い,都心回帰の特徴と,人口流出超過や雇用の減少などの郊外で2000年以降に見られることが多くなった変化の要因をさらに検討して行きたい。

■京阪神大都市圏における通勤パターンの変化
山神達也(和歌山大学)
 本研究は,1990年から2010年までの京阪神大都市圏を対象として,通勤パターンの変化を明らかにすることを目的とする。使用するデータは『国勢調査報告』であり,地区単位は2010年の市町村域とした。また,京都・大阪・神戸の3都市を中心3市とし,対象期間中に中心3市への通勤率が一度でも5%を超えた111の市町村を郊外とした。
 まず,人口分布の変化をみると,2000年前後に郊外への分散傾向から中心3市への集中傾向へと転換した。ただし,近年では地区選択的な人口成長がみられ,人口変化がモザイク化してきた。
 次に,中心3市への通勤率は全体的に低下傾向にあり,従業面での郊外自立化が確認された。また,10%通勤圏が縮小しており,都市圏設定の際には,通勤率の基準を下げるか郊外間通勤を基準に加える必要性を指摘した。加えて,仮想上の都市圏界までの距離が縮小しており,京阪神大都市圏が縮小傾向にあることを示した。
 そして,郊外市町村の通勤パターンを検討し,中心3市通勤率や自市町村従業率が低下したのに対し,その他市町村への通勤率や昼夜間就業者比率が上昇したことを示した。そうした中,草津市周辺や学研都市周辺では,昼夜間就業者比率が高く,かつ従業地による就業者の成長が大きいものの,それらの中心性は弱く,明瞭な郊外核が形成されたとまではいえない。したがって,その他市町村への通勤率や昼夜間就業者比率が上昇したのは,明瞭な郊外核への通勤が増加した集中的多核化の進展によるものではなく,郊外市町村間で相互に錯綜した通勤が増加した分散的多核化の進展によるものといえるであろう。

■大都市圏郊外の鉄道駅周辺における居住と就業
稲垣 稜(奈良大学)
 郊外における通勤流動研究では,公的統計では明らかにできない詳細を検討するためにアンケート調査やインタビュー調査が利用されてきた。こうした研究は,主として住宅取得行動によって人口が増加したと考えられる郊外住宅地域をアンケートの対象として選定してきた。これには,郊外の通勤流動が人口郊外化と関連づけて論じられる傾向にあり,人口郊外化を牽引した人々である大都市就業者が大量に流入してきたと想定される住宅地域が調査地としてふさわしいという判断があったと思われる。
 これに対し,郊外の中でも中心性や人口密度の高い地域が中心市街地である。とりわけ鉄道駅周辺地区は,大都市と郊外を結ぶ鉄道路線の輸送力強化にともない市街地化が急速に進展していった。こうした特性をもつにもかかわらず,これまで鉄道駅周辺地区が通勤流動研究の対象とされることは少なかった。そのため,この地区の基本的な通勤特性すら明らかになっていないのが現状である。
 そこで本研究では,鉄道駅周辺の一定地区すべての世帯を対象としたアンケート調査をもとに,郊外の鉄道駅周辺地区が通勤流動の面でどのような特性をもつのかを明らかにする。研究対象地域として近鉄奈良線の大和西大寺駅周辺地区を選定した。
 従来の研究で対象とされてきた郊外一戸建て住宅地での知見では,概して大都市への通勤率が高いことが強調され,これが郊外地域の一般的特徴として理解されてきた。しかし,本研究で明らかになったように,鉄道駅周辺における持ち家一戸建てには,自営業者を中心として,こうした一般論に当てはまらない人々が少なからず存在する。この点は,新たに宅地開発された一戸建て住宅の視点で郊外を論じるだけでは不十分であることを示唆する。

■討論(ASは坂西氏の,AYは山神氏,AIは稲垣氏の発言・回答)
AY:大都市圏における就業者数の変化を男女別に分析することは必要。さらに,郊外就業地で増えている産業は何か。
AS:2010年国勢調査では未回答の問題が大きい。別なデータソースを用いる必要がある。2000年以前の事業所・企業統計では,郊外で生活関連のサービス業や事業所サービス業などのサービス業関連が増えている。2000年以降はこれから分析したい。
AY:雇用が人口増を規定するのか,人口増が雇用を吸引するのかという問題に関して。商業とサービス業は人がいると雇用が発生する産業である。雇用と人口どちらが規定するのかという概念にはそぐわないのではないか。
Q1(豊田哲也・徳島大学):女性の就業問題と、人口と雇用との関係との問題がでた。人口と雇用に関する因果関係は,人口増の局面と人口減少の局面とでは異なる。人口が増加していた時代のモデルが,人口減少の時代に有効と思われるか。
AS:現在は郊外で人口と就業者数の双方が減少し,それは男性ばかりではなく女性でもその傾向がある。郊外での人口・就業者の減少は経済循環を考えると郊外に負の効果を与え,商業の衰退などにより住みやすさが悪化する。それにより居住地としての吸引力がいっそう低下する。人口と就業者の減少の影響をもっと考える必要がある。
Q2(豊田):地域経済学では,成長局面における因果関係とは異なるモデルに関する研究は進んでいるのか。
AS:かつては,成長局面で説明されることが多かった。外国とは異なる日本の高齢化を考慮した減少局面における研究は不十分である。その研究は必要。
Q3(高山正樹・大阪大学):人口と雇用の関係はマクロ的に見た場合とミクロとでは異なる。ミクロ的には,大阪都心部では人口増加が対個人サービスを増やしている。一方,東京も同様であろうが,より高次な対事業所サービスが増えている気がする。同じ減少局面ではあるが,場所によって違いがあることを際立たせることは意味があるのではないか。
AS:京阪神と東京との違いは感じる。大阪で人口が増加している地区で女性就業者が増加しているという現象は,人口が雇用を牽引しているとみなせる。一方,東京は大阪とは異なり,対事業所の雇用が牽引する面がやや大きいのかもしれない。場所により人口と雇用との関係が異なる要因を検討する必要がある。
Q4(鈴木洋太郎・大阪市立大学):2000年代の変化を理論的に説明する際に,従来から用いられてきた地価との関係はどうか。従来は,地価の高い都心部に就業する男性世帯主は郊外に居住せざるをえず,専業主婦は郊外に職を持たざるをえないとの説明ができた。現在は地価が低下し,家族規模が縮小して従来より広い面積が必要なくなったので,都心部でも住宅を求めやすくなった。このような,アロンゾ的な住宅立地論で説明できるのではないか。
AI:都心回帰という言葉は,外から都心に人口が戻るイメージがあるが,実際の都心の人口増加は,それに加えて,従来離心化していたはずの人々が都心に残ったためである。郊外の人口減少は,郊外からの流出は少なく30代に得た住宅に住み続けることが中心であるので,住宅市場からの説明がしっくりくる。
Q5(山田浩之・大阪商業大学名誉教授):都市経済的に説明する必要がある。地価以外に交通費の変化も重要である。交通費が低下すると,より遠方からの通勤が可能になる。現在は所得が上昇していないので,交通費はむしろ上昇しているかもしれない。また,産業構造の変化で,情報・サービス産業が都心で発展したことも影響している。さらに,生活に対する価値観,ライフサイクルも変化している。これらのことが要因と考えられる。今回の発表は変化を把握でき,それが地理学としては成果となるだろうが,都市経済学的には変化の理屈をさらに考える必要がある。
Q6(千葉昭彦・東北学院大学):かつて郊外住宅地で専業主婦の就業地は周辺であった。都心でも主婦は近くで職を得るのではないか。その点は郊外も都心も同じ。それでも郊外から都心に人口が移動した理由は,共働きの増加ではないか。双方ともに働くならば,都心に居住する方が有利。共稼ぎが増加した理由は,少子化により男性だけでは就業者が不足するから。このような説明に対してどう思うか。
Q7(豊田):就業条件は男女差がある。女性の場合,M字カーブがある。独身女性のフルタイム就業と子育て以降のパートタイム就業という構造が,都心と郊外でいかに変化しているのか。男女別に調査した坂西氏のパーソントリップ調査で,年齢別の分析は可能か。
AS:年齢別に属性を検討することは可能。かつては,30~40代女性が郊外で就業することが多かった。それが変化しているかどうかの,コーホートの分析が必要である。また,実証的な研究だけではなく,その要因を説明する理論を検討することも必要である。
AI:かつてあった都心で働くサラリーマンと郊外の専業主婦との性別役割分業は現在成り立たないといわれるが,それは少なくなったとはいえ,現在も一戸建て世帯では認められる。一方,共稼ぎ世帯は郊外の駅前の分譲マンションを選択する。都心のマンションと同様に,郊外駅前マンションは共稼ぎ世帯が主体である。また,2000年代以降で郊外,一戸建て・分譲マンションを購入する世代は,郊外生まれが主体であるので,都心を経由して郊外に来るスタイルではない。
AY:郊外において自宅近くで就業している人が増えている割には,自市町村内での就業率が低下していることは不思議である。この点のさらなる分析が必要。また,世帯構造が多様化する中で,交通費用などの一つの指標から説明することできるだろうか。その点がモデル化をする際に難しい点である。
Q8(豊田):山神先生に質問する。山神先生の分析は総数であったが,男女別・年齢階層別の就業者の分析はできるか。
AY:都道府県単位なら可能だが,市町村単位だとOD表を作れない。国勢調査では不詳が増えているが,それはたとえば非正規雇用で通勤先が週単位で変化している場合もあるかもしれない。統計調査では限界があるので,アンケート調査が必要。
Q9(吉田容子・奈良女子大学):都市と郊外の二分法は時代遅れではないか。アメリカと異なり,日本の郊外は鉄道により都心と結ばれている。しかも公共交通の発展により,かつての郊外は現在は郊外とは呼称できず,かつての郊外と呼称できるエリアは郊外より一層遠方の交通が不便な場所であろう。そこでは専業主婦が主体であるようである。どこまでが郊外か,都市地理学で議論するべきではないか。
Q10(豊田):都市圏の定義は通勤率を用いることでいいのか,難しいので長いスパンで取り組んでいきたい。
AI:坂西氏に質問。都心への通勤は減っているが,都心内の就業は増加。この点では職住近接で説明できるが,大阪市居住で郊外に通勤する人が多い。職住近接で説明できないパターンが増えているのではないか。
AS:職住近接をともないながら大阪市都心からほかに通勤する人々も増加している。居住地としても就業地としても,大阪都心と準都心が選択されている。その理由はこれから検討したい。
Q11(高山):坂西氏の研究は絶対数で示している。しかし,都心部に居住して郊外に通勤する人がかつても今も一定程度いるだけかもしれない。割合の変化で検討すると,いいのではないか。
Q12(豊田):大都市圏の構造変化には,いっそうの研究蓄積が必要であることが今回はよくわかった。また,要因の分析も必要である。今後は地理学だけではなく,隣接分野の研究者とも議論を深めるべきである。
(出席者28名、司会:豊田哲也、記録:根田克彦)
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2014.03.06  Comment:1
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