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第61回都市圏研究部会(開催日:2017年11月18日大会部会アワー)

日 時:2017年11月18日(土)10:30~12:00(予定)
※人文地理学会大会部会アワーとして開催

会 場:明治大学駿河台キャンパス リバティタワー
(〒101-8301 東京都千代田区神田駿河台1-1)
※会場へのアクセス方法はこちらをご参照ください。
http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/index.html

テーマ:都市社会学と都市地理学の対話

研究発表:
都市社会学のフロンティアと地域へのアプローチ
・・・・町村敬志 (一橋大)

コメンテータ:豊田哲也(徳島大)

趣旨:

複雑化する現代の都市圏研究には学際的視点の重要性がいっそう高まっている。年度の部会アワーでは「都市経済学と都市地理学の対話」として,地域経済循環の考え方について議論した。今回は近年の都市(東京)と都市論の動向を踏まえつつ,都市社会学で何が問題とされているか,また,より広く都市に関わる学術研究がどのような問題提起を行っていくべきかを考えてみたい。

連絡先:豊田哲也(徳島大)E-mail: toyoda.tetsuya[at]tokushima-u.ac.jp

<報告要旨>

■ポスト・グローバルに向けた大都市研究の課題
――都市社会学の視点から――
町村敬志(一橋大)
1)メガシティ論の背景:なぜいま都市論か?
今日,メガシティに関して相反する見方が世界的に存在している。たとえば国土交通省『国土のグランドデザイン2050』(2014年),P・コトラー『コトラー 世界都市間競争―マーケティングの未来』(2015年)などのように,大都市を国際競争力強化のための「成長エンジン」とみなす考え方が台頭している。しかし他方で,メガシティは厳しい状況にも置かれている。2016年に英国で行われたEU離脱を問う国民投票や米国の大統領選挙はともに世界に衝撃をもたらしたが,共通しているのは,ロンドン,ニューヨークといったグローバルシティが「自国主義」の強まりのなかで孤立しているという事実であった。グローバリゼーション,ネオリベラリズム,ICTの大きな波を通過して,「国家と大都市」の関係のあり方が,今日,改めて問い直されている。はたして東京はどうか。そこで都市研究,都市社会研究はどのような課題に直面しているのか。
2)巨大化した東京をどうするか?
国連の人口推計によれば,東京大都市圏は1960年代にはニューヨーク大都市圏を抜いて世界最大となり,その後も人口増加を続けた。他の先進国大都市が人口面で停滞していくなかで,なぜ東京はこれほど大規模化したのか。広大な軍用地・軍需工場の民生転換が可能にした速成的な都市開発,鉄道交通の基盤が都市化以前に完成し「移動の公共性・効率性」が確保されていたことなど,東京は都市基盤の面でいくつかの特徴的な利点をもっていた。
しかし,人口減少期を迎えた日本にあって,東京もまた孤立した存在となりつつある。「エンジン」としての東京への一方的期待が語られる一方で,「東京一極集中」が批判される(「地方消滅!?」)。ただし,東京大都市圏も「縮小」問題の例外ではない。人口・産業の偏在は,郊外での人口減少や格差拡大(「東京は郊外から消えていく!?」「階級都市」)などの課題をもたらしている。これらは都市研究に共通する課題である。
3)ポスト・グローバルにおける大都市研究の課題
20世紀のメガシティは21世紀のメガシティに何を伝えるのか。第一に,「都市・地域間競争」言説の強まりの下で,実際に競争しているのは何なのかを問い直す必要がある。第二に,新しい「空間」の出現によるスケールの重層化状況(ネット空間,トランスナショナル空間,プラネタリーな空間)の下で,むしろ「先端」から遅れていく「都市」をどう理解するか。スピード・速度ではなく,「鈍さ」のもたらす効果がそこでは課題となる。第三に,グローバル化の中で取り残されたかにみえた「国家」の逆襲をどう理解するか(「リスク・アイデンティティ・イベント」による政治的フレーミングの台頭,「特区」の埋め込みなど)。
グローバルシティ東京の「特徴」とは,グローバル化進展という世界的動向の下で,バブル崩壊後,いち早く「ポスト・グローバル的状況」が到来し,そこで独特の社会・文化変動を経験してきたことにある。ここではあらためて東アジア的な状況にも目を向ける必要がある。依然として残る国家主導型開発主義と,「例外化された」新自由主義の組み合わせは,東アジアに共通する都市状況となっている(一例として「超高層ビル」化という景観変動)。
経済のグローバル化とともに,結節点としての大都市は「グローバルシティ」として特権的な地位を確保するかに見えた。しかし,グローバル化時代はまた,危機や変動がグローバルに連鎖する時代でもあった。その結果,グローバル化に依存するグローバルシティは構造的な脆弱性を抱えるようにもなっている。テロ,戦争,災害,パンデミック,地球環境などセキュリティやリスクの問題が大きな位置を占めるに至って,治安や災害対策などの面で,都市が国家に依存する局面が増大している。「大都市」にすり寄る「国家」,「国家」に依存する「大都市」という状況が世界的に生まれている,と報告者は考える。
このような状況において,都市社会学でも新しい課題が生まれている。それは,グローバル化と「個人化」(Z・バウマン)のはざまで,都市をいかに人々の手に「取り戻す」か,という点である。先端的変化から「遅れていく」都市において,「都市への権利」は,どのような形で維持され,また新たな形をとって自生的に姿を現しつつあるのか。開放性を備えた「公共圏」はいかに創造され,同時にそれはどのような緊張関係の下にあるのか。たとえば,社会学による都市研究においては,パブリックスペース形成とジェントリフィケーションの相克が重要な課題となっている(報告者は,東京23区内で約1500ケ所のイベントスペースデータを作成しグループで分析を行っている)。世界的には,地理学,社会学,都市計画,文化研究などが連携しながらurban studiesの先端的研究が進められている。日本でも今回のような連携の機会を大切にしていきたい。

■討論とまとめ
Q 「ポスト・グローバル化」をどう捉えるべきか。それはグローバル化の終焉なのか,それとも逆行なのか。
A(町村:以下同) 「ポスト・グローバル化」は,1980年代から始まった短期の「グローバル化」に対比する概念である。19世紀末から20世紀初めの帝国主義・世界市場化によって,多くの移民が米国に集中し,それがシカゴ学派を生み出した。長期のトレンドやレジームには節目があり,1980年代以降の状況は21世紀入って節目を迎えていると思う。
Q アジア(特に東南アジア)の開発主義と日本の状況にはどのような共通点や相違点があるか。また,小泉政権と石原都政に代表される新自由主義政策と世界都市・東京との関係をどう考えるか。
A 日本における新自由主義は,国家主導的な体制の下での開発主義という点でアジアに共通する面がある。「例外的なネオリベラリズム」という議論は,地域で特殊化した現象や特定の階級に注目するが,まだ結論は出ていない。石原都政の実態は官僚支配の追認であったから,その影響を過大評価すべきではないだろう。むしろ,世界的な文脈の中で,都市再生や金融化など共通の要因を分析していく必要があると考える。
Q 情報社会における東京一極集中は一層進んでいると考えてよいか。インターネットやメディアが生み出すバーチャルな空間と人が集まるイベントスペースというリアルな空間の関係は対立的なのか相補的なのか。
A 1980年代から日本のメディアによる情報創出の大半は東京が担ってきたのは事実だが,インターネットの急激な発展の中で若者の既存メディア離れが進んでおり,東京の情報支配力が増大したか否かは検討の余地がある。この間に東京で建設されたイベントスペースは,ホールの巨大アリーナ化の一方で小規模なレンタルスペースも増加している。これを支えているのはオタクやアニメ愛好者によるネット上の情報交換であり,両空間は相補的関係にあると考えられる。
Q ロンドンオリンピックではドックズランドの再開発が進んだが,東京オリンピックはどのような影響をもたらすと予想されるか。
A オリンピックの開催地は21世紀に大きく変化した。かつては経済成長期の国家が首都で開催するか,大国の2~3番手の都市がシティセールスのために開催するかであったが,近年はグローバル化した先進的な首都が競っている。ロンドンオリンピックは都市再開発の手段として利用された面が強い。東京は臨海部に開発された土地の処分に目的があるように見える。災害時のリスク対策などに今後の課題があるだろう。

■コメンテーター所見   豊田哲也(徳島大学)
都市社会学は一般に,「都市とは何か」という哲学的・抽象的な議論か,コミュニティの人間関係などミクロな社会関係の分析が多く,都市の経済的・物質的な基盤に対する関心が弱いと感じられる。しかし,今回の講演では,具体的な東京の開発の歴史や都市空間の変容をふまえつつ,グローバルシティ,階層分極化,建物の高層化,メガイベント,バーチャルなネット空間,イベントスペースなど先端的で多様な論点が示された。町村氏は「自分は社会学の中で異端的な存在」と紹介し,もともと地理学から様々なアイデアを学んできたという。都市地理学研究者も「世界都市」仮説などから多くの刺激を受けてきたことから,両者で問題意識を共有し協力関係を確認する機会となった。メインテーマとして提起された「ポスト・グローバル化」については,今世紀初頭の9.11同時多発テロから最近の英国のEU離脱や米国トランプ大統領の登場など,国際的な政治経済環境の変化が想起される。今後,都市と国家の関係,都市と個人の関係がどう変化していくかは都市社会学研究のフロンティアであるという。「ポスト・グローバル化」した都市のイメージは未だ明らかではないが,社会学と地理学の対話から新たな研究が生まれることが期待される。
(参加者39名,記録:山神・桐村・豊田・根田)
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2017.10.06  Comment:0
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