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第62回都市圏研究部会(開催日:2018年2月10日)

日 時:2018年2月10日(土)13:30~16:30(予定)

会 場:場所:草津川跡地公園de愛ひろば(区間5),にぎわい活動棟「教養室」(JR草津駅東口より徒歩8分)
天井川として知られていた草津川は2002年に廃川となり,その跡地は公園として整備されました.にぎわい活動棟はその中にあります.
http://www.seibu-la.co.jp/kusatsugawa-atochi-park/deai/

テーマ:近年における大都市圏郊外の変化

研究発表:
土地利用変化からみた住宅開発・都市構造に関する地理学的研究
・・・・熊野貴文(京都大学大学院文学研究科・日本学術振興会特別研究員)

大都市圏郊外における買い物行動の変化
・・・・稲垣稜(奈良大学)

趣旨:大都市圏郊外は,特に居住機能に特化した地域として成長し,これまでにさまざまな住宅地が開発されてきた.しかしながら,近年,住宅開発のあり方にも変化がみられるとともに,「就業・消費機能に特化した都心」と「居住機能に特化した郊外」という図式が大きく変容している.今回は,大都市圏郊外の最近の動向を,住宅開発と買い物行動を指標に考えてみたい.

※終了後,懇親会会場までミニ巡検(草津川跡地公園,草津中心市街地など)を予定しております.ぜひご参加ください.

連絡先:稲垣 稜(奈良大)E-mail: inagakir(at)daibutsu.nara-u.ac.jp
※お手数ですが(at)は@に置き換えてください.

<報告要旨>

■郊外の再編と世代交代
―土地利用変化・都市構造との関連に注目して―
熊野貴文(京都大学文学研究科・院生,日本学術振興会特別研究員)
都市圏の構造変化としての郊外の位置づけは,郊外化の終焉と多核化/郊外の地方都市化という2つの軸に基づいて整理できる。前者と関連して,1990年代後半以降,郊外住宅地の高齢化や空き家問題といった衰退現象が焦点化された。後者については,郊外化の終焉というよりも,むしろ人口の郊外化の次の段階と位置付けられ,通勤・消費面で郊外が中心都市への依存度を低下させているという共通の問題意識を持つ。
これらの先行研究では,郊外第一世代と第二世代の世代交代ないしライフコースの差異を郊外再編の一つの契機として捉えようとした点が特徴的である。その一方で,先行研究では分析対象を住宅団地に限定する傾向があったことを指摘できる。これに対して,「まちなか居住」の議論は,都心と郊外住宅地の間に広がる既成市街地に注目しており,都市圏の空間構造を[都心部―郊外住宅地]という二分法に還元できないことを示唆している。
以上の先行研究の整理を踏まえ,大阪大都市圏の郊外外圏に位置する奈良県桜井市を事例に,世代交代が新設住宅の立地と土地利用変化に及ぼす影響について検討した。また,前述の「まちなか」に含まれる,鉄道駅周辺の市街地と連坦して都市化が進んだ地域を対象にした。
桜井市では,1990年代後半以降,それ以前に比べて,新設住宅は既成市街地に立地しにくくなり,特に中心市街地で低・未利用地化が進行していた。世代と関連する要因に着目すると,以下の二点を指摘できる。
第一に,桜井駅から離れた周辺部では,近年土地所有者の高齢化や農業・製材業の後継者不在を背景に,相続を契機とした土地売却や相続税対策としての賃貸アパート転用がみられる。第二に,郊外第一世代と第二世代の通勤行動の差異を反映し,桜井市では中心都市への求心的通勤に代わり,自家用車を利用した郊外間の分散的通勤が増大したことが新設住宅の離心化に寄与した。さらに,こうした自家用車中心の生活行動は桜井駅周辺の中心市街地に駐車場需要を生み,土地所有者は投資リスクの低い駐車場経営を選択している。
以上のように,人口や経済活動が停滞する郊外外圏では,地価や産業構造の変化といった経済的要因に加えて,住宅需要者側と土地所有者側の世代に関連する要因として,世代間の通勤行動の違いや土地所有者の相続・後継者問題が土地利用変化,ひいては都市構造の変化に影響している。本発表の事例は,「まちなか」に該当するような市街地における世代・ライフコースに着目した研究の余地が残されていることを示唆する。

■大都市圏郊外における買い物行動の縦断分析
―平城ニュータウンを事例に―
稲垣稜(奈良大)
日常生活行動の変化から大都市圏構造を検討する場合,通勤行動と買い物行動がその指標として取り上げられることが多い。発表者はこれまでに,主として通勤行動を取り上げてきたが,本報告では,大都市圏郊外に居住する人々の買い物行動の変化に着目した。
従来の研究では,ある1時点の買い物行動に限定したものや,複数時点であっても被調査者が異なる横断データを利用したものが中心であった。そこで本報告では,縦断データによる買い物行動の分析を試みる。しかも,短期間の縦断データではなく,数十年間にわたる縦断データを収集することにより,大都市圏構造の変化と関連付けた分析を行う。
対象としたのは奈良市の平城ニュータウンであり,平城ニュータウンに居住する全世帯に対してアンケート調査票を配布した。このうち分析対象は,戸建て住宅の世帯主と配偶者である。回答者を1980年以前入居者,1981~95年入居者,1996年以降入居者に区分し,入居時期による買い物行動の違いや,同一回答者の時代による変化を分析した。1980年,1995年,2016年の3時点における買い物行動をたずねた。
買回品に相当する高級服は,1980年と1995年とでは大きな変化はみられず,店舗の種類では百貨店,買い物先では大和西大寺駅周辺,難波・心斎橋が卓越していた。しかし2016年になると,百貨店,難波・心斎橋の利用割合が大幅に低下し,代わりに平城ニュータウン内,総合スーパーの割合が上昇した。大阪大都市圏の下位中心地である大和西大寺駅周辺は利用割合が低下しなかったが,これは大和西大寺駅周辺から平城ニュータウン内に買い物先を変える人が多かった一方で,上位中心地である難波・心斎橋から大和西大寺駅へと買い物先を変える人も多かったためである。最寄品に相当する普段着は,高級服よりも変化が早く,すでに1980年から1995年にかけて,平城ニュータウン内の割合が上昇した。普段着の場合は,上位中心地から下位中心地へ,下位中心地からニュータウン内へという買い物先の階層的な変化はみられず,上位中心地から直接平城ニュータウンへのシフトがみられた。
本報告では,長期にわたる縦断データを収集し分析することにより,長期的な大都市圏構造の変化と関連付けた買い物行動を考察することができたと考える。

■討論
Q:桜井市では2000年代に入って人口が1割ほど減少しているが,この要因は何か。
AK(熊野:以下同):郊外住宅地としての人口流入の減少と郊外第二世代の転出,そして輸入製材の増加や住宅需要の低下に伴う製材業の不振による雇用の減少などが,人口の減少を招いたと考えられる。
Q:大都市への依存度と郊外の商業集積とのいずれに関心の中心があるのか。
AI(稲垣:以下同):大都市への依存度の変化に関心がある。これまで通勤流動に着目してきたが,買い物行動から日常生活行動を捉えることで,大都市圏郊外の変容を検討したいと考えた。
Q:縦断データの分析はそれだけで貴重なものだが,今回の分析結果からは,住民の高齢化と都市構造の変化とを区別できないのではないか。
AI:データが膨大なため,今回は中心都市への依存度の変化に焦点を当て,購買行動の世代間の差を明らかにした。ご指摘の点はこれから精査したい。
Q:これまで郊外の第一世代と第二世代の違いに研究の焦点があったが,近年の郊外の変容を検討するに際し,それ以外の世代をどう考えるか。例えば第二世代と第三世代の間に何か変化が生じているのかという視点が必要ではないか。
AK:第一世代が中心であった時の郊外住宅地では,均質な空間,均質な居住者を前提として議論できる面が多かったが,世代交代が進む中で多様な動向が現れている。この多様な動向にパターンを見出せるか否かに一つの関心があり,今回の桜井市の事例では,世代交代に伴う土地売却とその後の土地利用の変化に着目した。
AI:第一世代と異なり郊外を出身地とする第二世代は,居住地も働き方も多様である。多様性が増した第二世代の次の世代となると,まだ数が少ないうえに対象者を捕捉することが困難である。ご指摘の点はこれから議論を深めていく内容であろう。
Q:世代による違いは郊外に限定される議論ではない。その中で郊外という切り取り方にどのような有効性があるのか。郊外の変容については社会学を含め他分野でも議論が行われているが,地理学からどのようなテーマを提示できると考えているか。
AI:地理学の場合,空間構造の変化をどう理解するかに議論の中心がある。これまで,中心都市と郊外という二項対立的に議論される一方で,郊外の多核化が検証されてきた。また,典型的な郊外とされてきた地域において,駅前の評価が高まるなかで職住近接が実現されることがあるのに対し,都心居住者の通勤距離が意外に長く,都心周辺地区が居住の場に変化している事例がある。このように,大都市圏の空間構造の変化については,単純化できない面があり,様々な動向が錯綜している状態にある。
Q:都市圏多核化とも関連するが,大都市圏では,中心都市が圏域全体に影響力を行使する一方,郊外の中心地はその周辺地域に影響を及ぼしている。大都市圏のこうした重層的な構造はどう捉えるのがよいのか。大都市圏というくくりを作ることにどういう意味があるのか。
AK:発表者はこれまでに大都市圏の既成市街地や郊外内圏についての研究を進めてきたため,今回は郊外外圏にあたる桜井市を対象とした。桜井市の場合,大阪大都市圏外にあたる山間部の町村に対する中心地という機能を持つと同時に,桜井市内においても,駅前と駅から離れた地域とで住宅供給や土地利用の変化の状況に差があり,重層的な面がある。当初は大阪市の都心部から離れるに従ってその影響力が次第に弱まっていくグラデーションのような状況を想定していたが,何を基準にどこで都市圏を区切るのかは確かに難しい問題である。
AI:大都市圏の中心都市と郊外という位置づけに関して,本部会の会場が位置する草津市についても,市全体として人口成長は止まってきたが,草津駅や南草津駅に近いところでは増加が継続しているのに対して周辺部では減少傾向にある。また,草津市は事業所も多く,典型的なベッドタウンというわけでもない。こうした情勢を踏まえると,まずは郊外のそれぞれの地域の都心に対する位置づけを丁寧に行うことが必要ではないか。
Q:今回の事例でいうと,平城ニュータウンは都心に職場のある人の住宅地としての性格が強い。一方,桜井市の場合,宿場町と製材業で成り立ってきた都市が郊外住宅地化した面がある。前者であればライフコースに沿った入居者が多く,例えば老親を引き取ることなど,ライフコースに沿った諸問題がこれから顕在化するのに対し,桜井市では,人口減少が深刻化する農山村とのかかわりの重要性が増すのではないか。
AI:桜井市は就業の場としての都心に対する住宅地としての郊外という特性を弱めている面があり,平城ニュータウンでは住宅地でありかつ商業集積地としての特性も強めてきた面がある。郊外の各地域をその特性に応じて類型区分し,そのなかから内圏と外圏との違いを明らかにして大都市圏というくくりの意義を再検討するとともに,郊外の再編成が郊外住民の世代交代とどう関連するのかを検討していくことが重要ではないか。
AK:ご指摘の点を参考にして今後も研究を進めたい。

■ミニ巡検
今回は,研究発表に加えて,近年でも変化が著しい草津市中心部のミニ巡検も実施した。今回の会場は,廃川となった旧草津川を再開発してできたものである。都市開発としては特異な事例だが,天井川の流路が公園化され,その一部に飲食店や貸しスペース「にぎわい活動棟」などが入った。また,浮世絵にも描かれた「草津川の渡し場」の話題で盛り上がった。
その後,天井川を下って東海道と中山道の分岐点に立つ追分道標と高札場址をみたのち,草津宿本陣周辺の旧宿場町地区を歩いた。旧街道沿いは歴史的建造物が点在する中にマンションなども建っているが,道沿いの部分を瓦葺きの庇をのせた木製の壁にするなど,歴史的な街並みを残そうという工夫がみられた。
その後,天井川をくぐって草津駅方面に向かった。草津駅近くの商店街では,アーケードが一部で取り除かれていたが,これは市街地再開発事業に伴うもので,高層マンションの建設工事中であった。その隣には完成した高層マンションが建っており,これと同規模のものができるとのことであった。また,この工事に伴い,飲食店がプレハブで営業していた。そのほか,商店街に空き店舗は少ないものの,物販店が少なく飲食店が多いことが印象的であった。
最後に,草津駅から東の方を見渡した。草津駅東側では,駅近くでは高層マンションが立ち並んでいるが,駅から離れると戸建て住宅や工場が増えること,草津駅からは工場で働く人々のためのバスが出ており,草津市で従業する人が多いことなどの説明があった。
雨が降る中での巡検であったが,旧草津川や市街地再開発,歴史を活かしたまちづくりなど,今まさに変化の過程にある現場を見ることができ,実りあるものとなった。

■まとめ
今回の部会は「近年における大都市圏郊外の変化」をテーマとし,大阪大都市圏の内圏と外圏,そして買い物行動と住宅供給や土地利用の変化についての研究発表が行われた。また,近年の変化の著しい草津市中心部の巡検を実施した。今回の発表で明らかにされた居住開始年別にみる買い物行動の違い,そして住宅供給や土地利用の変化を招いた相続や事業継承者の不在は,いずれも郊外居住者の「世代」に関わる問題であった。興味深い知見が提示されたことが一つの誘因となって,郊外の変容に関して,地理学として社会的にインパクトのある議論をどう展開するかという大きな課題も提示された。今回の部会でこの課題に対する明確な答えは導き出せなかったものの,郊外での変化が多様性に満ちていることと,大都市圏郊外の再編では世代交代という視点が一定の有効性を持つことについては,共通の理解を得られたのではないかと考えられる。今後も多様な観点からの研究蓄積が求められるとともに,郊外とは何か,広く社会にアピールできる地理学的観点とは何か,を深く検討していくことが必要であろう。
(参加者27名,記録:山神)
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2017.11.25  Comment:0
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