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    日 時: 2009年9月12日(土)14:00~17:00
    会 場: キャンパスプラザ京都 2F第2会議室(電話:075-353-9111)
         〒600-8216 京都市下京区西洞院通塩小路下る (JR京都駅ビル駐車場西隣)。
         *キャンパスプラザ京都へのアクセスはこちら

テーマ:都市圏の構造把握の試みと実態
発表:
  山神達也(立命館大・衣笠総合研究機構研究員)
    近年の近畿地方における市区町村人口の変動過程
       ―自然動態と社会動態との関係を中心として―
  伊藤香織(東京理科大)
    非集計データから求める集積の空間範囲
      ―東京都区部の密度と変化―

連絡先: 古賀慎二(立命館大) 
■報告要旨

近年の近畿地方における市区町村人口の変動課程
―自然動態と社会動態の関係を中心として―
山神達也(立命館大学・衣笠総合研究機構研究員)
 近年の日本社会は本格的な人口減少期への突入前夜にある。しかし、国勢調査報告をみると、2000年から2005年の間に約7割の自治体で人口が減少しており、地域社会の多くは既に人口減少期に突入している。以上を踏まえ、本発表では、2000年度以降の近畿地方を対象として、市区町村人口の変動過程を把握することを試みる。具体的には、まず、人口減少を記録した市区町村の位置とその変化を確認する。次に、市区町村の人口成長にみられる格差の程度を計測した後、その動向に自然動態と社会動態とがどのように関係するのかを検証する。使用する統計は『住民基本台帳人口要覧』各年版である。
 まず、微増と微減とを繰り返す近年の日本の人口は、自然動態の影響を強く受けていることを確認した。次いで、人口が減少した都道府県を確認すると、1990年代半ばは国土縁辺部の道県であったのに対し、2000年代では大都市圏を除くほぼすべての道府県であった。また、2000年以降に人口が減少した道府県では、自然減少を伴う形で人口が減少していた。このように、都道府県別の人口成長には格差が存在し、大都市圏とそれ以外との対比が鮮明化してきた。次に、近畿地方全体の人口の変動過程をみると、人口流出と自然増加が継続するものの、後者が次第に縮小することによって2004年度から人口が減少し始めた。ただし、2007年度でもまだ自然減少を記録するには至っていなかった。
 以上を踏まえ、2000年度以降の近畿地方における市区町村人口の変化を検討した結果、以下の点が明らかとなった。まず、人口成長の地図をみると、京阪神大都市圏の市区町村では、一部で急増したり激減したりするものの、総じて変化は小さかった。また、大都市圏外の地域では、中規模の都市で微増か微減かであったのに対し、小都市では微減から大幅な減少に転じた。一方、山間部では継続的に人口が減少し、その減少幅が拡大した。こうした人口変化の空間パターンに変化はみられず、人口減少が進む市区町村で減少幅が拡大するとともに、それらのほとんどが自然減少を示した。こうした人口成長の市区町村格差の拡大は、人口成長の変動係数からも確認できる。加えて、市区町村人口の変動過程では、自然動態よりも社会動態の影響が強かったが、次第に自然動態の影響も強まってきた。
 これらの結果をもとに人口減少の地域的展開を整理すると、人口減少は、山間部では2000年度には既に生じており、それが次第に中小都市、さらには中規模の都市圏へと拡大してきたものの、大都市圏では一部の市区町村に限られていたということになる。つまり、人口減少は、大都市圏外の地域を徐々にかつ深刻に侵食してきたのである。その中で人口成長の市区町村間格差は拡大してきたが、それは、都市圏外の市町村において人口流出と自然減少の双方が拡大したのに対して、大都市圏内の市区町村では、自然増加、社会増加ともに変化が小さく人口が安定的であったという対比の構図が招いたものであった。人口の変動過程においては、日本全体というレベルでも、また、近畿地方の市区町村というレベルでも、大都市圏とその他の地域という対比が鮮明化してきているのである。

非集計データから求める集積の空間範囲
―東京都区部の密度と変化―
伊藤香織(東京理科大)
 従来利用されてきた一般的な統計データだけでなく,近年では多様な非集計データの利用可能性が拓かれてきている.一方で,地理情報の発達によって技術的にも非集計データが扱えるようになってきた.本研究報告では,非集計データから集積の空間範囲を求める方法を提案し,いくつかの種類のデータを用いて実際に集積の様態を視覚化する.
 集積の分布を視覚化するためには,密度に応じて塗り分けて示すのがわかりやすい方法であるが,たとえば市区町村レベルか都道府県レベルかあるいは何メートルグリッドかといった具合に,密度を算定する空間単位によって見え方が異なり,得られる集積の空間範囲にも影響を及ぼす.これは,「可変地区単位問題=Modifiable Areal Unit Problem (MAUP)1)」として一般に知られる問題でもある.
 これに対して,本研究では,モデル選択基準と再帰的構造をもつ複合スケール領域分割をもちいて,集積を表すための「適切な」空間単位を求める.すなわち,対象領域全体を分割してゆき,大域的に見て分布のしかたが同質の空間範囲がそれぞれ括られるようにする.分割の秩序としては二分木矩形分割を採用し,MDL(Minimum Description Length)基準によってどの程度まで分割していくのかを選ぶ.
 MDL基準は,Rissanen2)によって提案され情報理論の分野で発達してきたモデル選択基準で,実データとモデルの選択肢が与えられたときに,実データを最短の符号語長で記述できるようなモデルを最適なモデルとして選択する.具体的にここでは,分割のしかた自体及び各エリアにおけるパラメータの記述(モデルの符号語長)と,分割されたエリアごとにデータの分布を記述する(モデルの下でのデータの符号語長)の和が最小となる領域分割を求める.この分割は大域的に見て同質な範囲をそれぞれひと括りにするような性質をもつ.
 この方法を,3種類の対象に対して適用した.1. 日本全国の近代の工場分布,2. 東京都区部の業務集積,3. 東京中心部の業務及び世帯の変化,である.
 1.では,全国工場通覧を市区町村レベルでアドレスマッチングした,1902年(7073件),1919年(23212件),1935年(93831件)の日本全国の工場の位置等のデータを用いた.各年次のデータから適切な領域分割を探索したところ,それぞれ,約1600km四方から約13km四方までのスケールの複合した419エリア, 874エリア,1614エリアに分割された.産業別の分布についても同様に視覚化した.
 2.では,職業別電話帳データベースを号レベルでアドレスマッチングした東京都23区の1990年9月(約75万件),1995年9月(約70万件),2000年9月(約63万件)各時点の事業所等のデータを用いた.各年次のデータから適切な領域分割を探索するとともに,Kullback-Leibler情報量(相対エントロピー)を用いて特徴ある業種構成のエリアを抽出し,その分布と内容を示した.
 3.では,東京中心部9区の1995~1999年の住宅地図データベースから作成した158万余件の事業所や世帯の時系列データを用いた.ここでは,事業所や世帯の空間分布だけでなく,5年間に観察可能な発生・持続・消滅(移動を含む)についてもモデル化し,適切な領域分割を探索して視覚化した.その結果,対象領域内で,変化のスピードの速いエリア・遅いエリアの分布,大規模開発など大きな変化の起きた場所などが顕在化された.

1) Openshaw, S. and Taylor, P., ‘A million or so correlation coefficients: Three experiments on the modifiable area unit problem’. (N. Wrigley ed., Statistical applications in the spatial sciences, Pion, London, 1979), pp. 127-144.
2) Rissanen, J.,‘Universal coding, information, prediction and estimation’, IEEE Trans. Information Theory, IT-30, 1984, pp. 629-636.

■山神報告に関する事実確認質疑
Q1 (小原丈明・京都大)1987年の京都府で住民票の除去という形で人口が急激に減少しているが、具体的にどういうことか。
A1 確認していない。ただし、市区町村単位でみたとき、京都府以外でも職権による住民票の記載や削除が多くなる地区に大阪市西成区がある。居住の実態の有無などに応じて住民票の記載・削除が行われることがあるので、人口の変化とは関わらない増減が社会増減に含まれている。また、国籍の取得・離脱も含まれている。

■伊藤報告に関する事実確認質疑
Q1 (藤塚吉浩・高知大)分析に使用した空間単位について、最小の区画の形状は正方形か。地球表面を区画する場合は、国土の北では東西が短く、南は長くなるので、経緯度を考慮した区画を用いるべきではないか。
A1 今回の分析には直交直線の座標系による正方形を使用したが、日本全国を扱った部分については、本来は面積算定に配慮が必要だと考える。今後検討したい。

■総合討論…AIは伊藤氏の回答。AYは山神氏の回答。
Q1 (花岡和聖・立命館大)伊藤報告に関して、工場通覧の工場とは、どのような定義のものか。集積の範囲を特定するために、地域の同質性をはかるものを工場の密度としているが、他の指標はあるか。
AI1 工場通覧は、職工数5人以上の工場を集計している年次と10人以上の年次とがある。工場通覧には、工場名・住所・代表者名・開業年などが記載されている。馬力数・職工数がある年次もある。1902年から35年で10倍以上の工場数となっている。産業分類で工場を見ている。すべてを1と数えるには問題があるため、解決法を考えたい。モデルを細かくすればするほど、たくさんのデータが必要になる。モデルを細かくすると、区切りが大きくなる可能性がある。
Q2 (古賀慎二・立命館大)近代日本の工場分布についての分析では、工場通覧に掲載されている工場数がデータソースとなっているが、工場には大工場もあれば小工場もある。同じ工場数であっても工場規模により地域に与える影響が違うため、そうした工場規模を考慮して、重み付けをした分析が必要ではないか。
AI2 工場通覧には年次によっては職工数のデータがあるので、重み付けは可能である。また、住宅地図とタウンページを組み合わせると、おおよその床面積や一つの建物に入居しているテナント数を把握できるため、工夫をすれば可能である。
Q3 (小原丈明・京都大)工場通覧の分析で、市区町村の代表点は重心なのか、役所の場所なのか。
AI3 幾何学重心である。
Q4 (山神達也・立命館大)建物の場合は、代表点でとらないと難しいか。
AI4 建物の中に複数のテナントが入っているという点では、建物が代表点になる。実際の算定では、建物の重心を中心にして、建物面積と同面積の円内に、中心に近いほど確率を高くして分散させている。市区町村の場合でも代表点に落とさないやり方も検討したい。
Q5 (豊田哲也・徳島大)可変地区単位問題を回避しながら集積の密度を分析する方法には、GISのカーネル密度関数が多く用いられる。これは各地点データをいわばボトムアップで集計していく考え方だが、今回示された方法は上から領域を分割する方法にあたる。2つのアプローチの理論的関係について、どのように理解したらよいか。また、前者と比べて後者を用いる意義やメリットはどこにあるのか。
AI5 ともに集計範囲の工夫であるが、視点が異なる。本方法はデータに応じて集計範囲のサイズを調整しオーバーフィッティングを避けることが重要であり、カーネル密度法の場合は確率関数としてデータを外挿する考え方である。カーネル密度法自体は、オーバーフィッティングを避ける機構を持たない。なお、本方法の場合、上から領域を分割していくと言っても、小さい領域を合算していくと言っても、説明のしかたが異なるだけで、アルゴリズムも結果も同じである。
Q6 (伊藤悟・金沢大)空間分割をする際には、一カ所ずつ分割するかどうかを判断していくようだが、そのような場合、局地的には最適解であっても全域的ではそうでない場合もある。どのようなアルゴリズムを使うのか。
AI6 確かに1カ所ずつ判断していくわけであるが、再帰的に計算することで、全域的に最適な解が得られるアルゴリズムになっている。
Q7 (古賀・立命館大)個人的には空間分割する手法よりも、分割して描かれた地図からどのような傾向が読み取れるのかの方に関心がある。NTTのデータを使い東京中心部の業種別分布傾向をみた分析では、社会関連サービスなど業種分類として適切なものと、飲食店と農林業が同一業種に分類されたものなど分類として不適切なものとが混在している感じがする。
AI7 NTTのデータは、独自の業種分類で、小売と卸売が分かれていなかったりするため判断が難しい。最も細かい分類をもとに、業種分類の適切な括り方が必要だと考えている。
Q8 (山田 誠・龍谷大)NTTのデータは、重複掲載されている場合があるのではないか。
AI8 重複掲載は除かれているが、どの業種に帰属させるかの基準はよくわからない。
Q9 (古賀・立命館大)山神報告に関して、人口成長という概念はどういうものか。人口成長の定義が必要ではないか。
AY9 今回の報告では言葉の整理が不十分であるのは確かだが、人口変化の地域差を格差と表現するのなら成長という言葉を用いたほうが良いと考えたことと、対前年比人口を指標としたことが理由である。
Q10 (藤塚吉浩・高知大)報告で示された都心とインナーシティとを区別する基準は何か。大阪市をみると、人口が増加しつつも自然減少を示す地区があるので、その定義を知りたい。
AY10 都心やその周辺の地区では流入者が増え始めているが、流入者が増え始めたばかりの段階では出生数は増えにくいため、高齢化が進んでいれば人口増加と自然減少とが同時に起こることがある。次に、インナーシティについては、都心周辺で人口が減少しているのは、大阪市では南部に、神戸市では西部に偏っている。本発表では直接分析しているわけではないので、都心部とそうでないところ、人口が減りつつあるところ、インナーシティなど、地域区分をどのようにするかを今後の課題として掲げた。
Q11 (藤塚・高知大)人口が減少していることをもってインナーシティとしているのか。
AY11 そうではない。インナーシティの定義の問題は検討課題である。ただし、インナーシティとして認識されている地区の一部で大きな減少を示すという事実はある。
Q12 (伊藤香織・東京理科大)インナーシティとは具体的にどこを指すか。
AY12 大阪市の南部を中心に環状線に沿う形で分布する、人口密度が高く居住環境が悪いところを指す。
Q13 (豊田・徳島大)山神報告に関して、伊藤報告で言及された可変単位地区問題からもわかるように、集計スケールを都道府県から市町村に細分化すれば、自然動態と社会動態の表れ方が異なるのは当然ではないか。また、「人口成長」を従属変数、自然増減と社会増減をそれぞれ独立変数として回帰分析をおこなっているが、恒等式「人口成長=自然増減+社会増減」が成り立つ以上、説明モデルとしてトートロジーになっていないか。
AY13 人口減少社会については、少子高齢化による自然減少が強調されすぎているように感じるので、市区町村人口では人口移動の重要性が未だに高いことを示すために比較した。次に、技法上の問題だが、個々の市区町村では必ず成り立つ式でも、右辺の関係性には市区町村ごとに差があることから、それらの関係性を確認するために用いている。ただし、人口成長の市区町村差に及ぼす両者の影響を直接的に捉えることができるような手法を模索している状況にある。
Q14 (豊田・徳島大)人口学的現象として自然増減と社会増減は別ものなので、両者を区別して論じることは重要と思う。両者の空間的分布にどのような特徴や変化が見られるのか、地図資料として提示してほしかった。そうすれば、少子化や高齢化など政策的課題の解明にも役立つのではないか。
AY14 配布した地図は人口成長の地域差を確認することに主たる目的があった。加えて、その図に自然減少を重ねると人口減少時代を強く印象づけることができる地図になったので提示した。これに社会動態まで重ねると地図が見にくくなるという問題があった。次に、自然増減と社会増減との関係について、近年では死亡数の増加の影響が強くなってきたという結果を得たが、これまでの若年層の流出が出生率に及ぼした影響や、ご指摘のあった1000人あたり出生数は少なくても合計特殊出生率が高くなる要因などにも議論が展開できれば、政策的課題へも応用できるであろう。
Q15 (古賀・立命館大)今後の応用可能性について両者に尋ねたい。伊藤報告では、今回工場通覧やNTTのデータを用いた分割手法が提案されたが、例えば、有権者数データを用いて適切な選挙区割りなどが導けないか。また、医学の分野で、断層写真などを用いて腫瘍の集積箇所を分析し、切除の優先順位を決めることなどにも応用できるのではないか。他方、山神報告では、今回は年齢や性別の違いなどを考慮しない形での人口増減を扱っているが、性差や年齢構成の違いなどからの視点でも、研究を継続できるのではないか。
AI15 空間分割の手法は、元々は画像処理に関する研究の応用である。MDLは、データ圧縮、画像認識、機械学習などに用いられる。
AY15 可能なところから研究に取り組みたい。
(参加者:15名,司会:古賀慎二,記録:藤塚吉浩)
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2009.09.24 
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