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    日 時: 2010年130日(土)14:00~17:00
    会 場: 立命館大学歴史都市防災研究センター・カンファレンスホール(地階)
         〒603-8341京都市北区小松原北町58番地
         * 歴史都市防災研究センターへのアクセスはこちら[map]

テーマ:現代の都市開発を考える

発表:
  菊池慶之(日本不動産研究所)
    オフィスビル大型化の背景とその影響
       ―東京都心5区における「超大型オフィスビル」を事例に―
  小原丈明(京都大学大学院)
    バブル経済期以降の日本の都市再開発
      ―市街地再開発事業の実施状況から―

連絡先: 古賀慎二(立命館大)

■報告要旨
オフィスビル大型化の背景とその影響
―東京都心5区における「超大型オフィスビル」を事例に―
菊池慶之(日本不動産研究所)

 近年の都市地理学におけるオフィス立地研究は,主にオフィス空間の需要者たる企業の立地決定メカニズムに関心が向けられてきた。すなわち,都心部に立地するオフィス機能の高次化や,情報通信技術の発達によるバックオフィス的な部門の郊外へのスピンアウトといった議論であり,オフィス空間の形成やその供給者への関心は,都市の成熟とともに希薄化してきた。しかし1990年代後半以降,大型のオフィスビル開発が大都市圏を中心に増加し,特に2003年には東京におけるオフィスビルの大量供給が「2003年問題」と言われるに至った。そこで,本報告ではオフィスビル開発の大型化の背景をオフィスビルの所有・開発主体から検討した上で,都市内部構造に与える影響を考察する。なお,オフィスビルの把握に当たっては,日本不動産研究所「全国オフィスビル調査」を使用し,延床面積が10万㎡以上の事務所用途のビルを「超大型オフィスビル」と定義した。

 1990年代後半以降の「超大型オフィスビル」開発増加の背景には,都市開発に関わる様々な規制緩和,大規模な用地の供給,建築技術の向上等に加えて,都市開発への投資資金の流入があったものと考えられる。バブル景気崩壊以降,日本の不動産市場は低迷し,オフィスビルの資産価値も大きく低下した。このような日本の不動産市場を活性化させるため,2000年に投資信託法が改正され,不動産の証券化が可能となった。不動産の証券化とは,オフィスビルなどの不動産の所有権を証券に変換する仕組みであり,小口に分割した証券を多様な投資家に売却することにより,開発・保有リスクの分散化が可能となる。一方,従来からのオフィスビルの開発・保有主体であった不動産資本や事業会社は,資産収益率の重視や,時価会計・減損会計制度の導入により,不動産売却の必要性に迫られている。この結果,オフィスビルの保有主体は,従来の不動産資本や事業会社から不動産投資家に移りつつある。

 ところで,投資対象としての不動産の開発・保有には主に3つのリスク要因が挙げられる。第1は価格変動リスクであり,すべての不動産保有者が共有する基本的なリスク要因である。第2は不動産供給の非弾力性に起因する需給リスクであり,不動産からの収益を期待する保有者にとっての収益性低下のリスク要因である。第3は流動性リスクであり,売買に要する費用や時間が,短期的な保有者にとってのリスク要因となる。このうち第2,3のリスクは,保有者と利用者が異なることによって生じるリスクであり,第2の需給リスクは相対的に稼働率・賃料水準が高い大型のオフィスビルへ,第3の流動性リスクは市場規模が大きく取引量の多い大都市に資金を集中させる効果を持つ。実際,J-REIT各社の保有するオフィスビルをみると,7万㎡以上の大型物件の構成比が高く,特に10万㎡以上の「超大型オフィスビル」では東京都心5区におけるオフィスビルストックの分布割合26.1%(延床面積ベース)に対してJ-REIT保有物件の構成比では35.4%(区分所有を含む)と10%近く高くなっている。

 次に,このような「超大型オフィスビル」開発が都市構造や周辺エリアに与える影響を明らかにするために,東京都心5区における2001~06年にかけての従業者数の変化をみた。都市圏スケールにおいては,東京圏のオフィス従業者は,東京都心5区への集中傾向を強めており,郊外で増加が続く店舗・飲食店従業者とは対照的である。一方,東京都心5区の内部においても,超大型オフィスビル開発はオフィス集積が高まる地区と低下する地区とを二極化させる傾向にある。さらに,「超大型オフィスビル」所在町丁では,オフィス従業者ばかりでなく集客産業の従業者数も増加しており,「超大型オフィスビル」を核とした都市内部構造の再編成が進んでいるものと考えられる。
 さらに,「超大型オフィスビル」開発のあった六本木南エリア,汐留エリアを町丁目単位でみると,周辺の町丁では「超大型オフィスビル」に入居する企業の関連産業の集積によりオフィス従業者数が増加しているものの,集客産業の従業者数は減少傾向にある。このため,この2エリアでは「超大型オフィスビル」の集客力が,周辺の既存集客施設の売り上げに結びついていないことが明らかになった。

 以上の点から,「超大型オフィスビル」増加の背景にはオフィスビルの投資対象化による従来とは異なる開発・保有戦略の出現があり,都市内部構造の再編にも大きな影響を及ぼしているものと考えられる。このため,今後の都市内部構造の分析には,投資家の投資戦略や不動産の収益性といった視点が重要になるものと言えよう。


■バブル経済期以降の日本の都市再開発
―市街地再開発事業の実施状況から―
小原丈明(京都大)

 今日の日本の都市空間は,郊外住宅地開発に代表される非都市的地域を都市的地域へと変容させる都市開発とともに,既存の都市的地域に再度手を加える都市再開発が行われてきた結果として存在する。それら都市開発や都市再開発が社会経済情勢や政策と密接に関連する形で実施されてきたことは想像に難くないが,それら情勢や政策は時代により,あるいは地域により異なることから,都市開発・都市再開発の意義を社会的側面と空間的側面に留意して通史的に検証することで,今日の都市空間の成り立ちの一端を明らかにすることができよう。

 そこで,上記の観点に則して,本発表では都市再開発の手法の1つである「市街地再開発事業」として実施された都市再開発を研究対象とする。市街地再開発事業は1969年に制定された「都市再開発法」に基づいており,これまでに700を超す地区で実施されてきた都市再開発の代表的な手法である。

 都市再開発は地理学など多分野で研究対象となり,多くの研究蓄積があるが,総じて個別事例を扱った研究が多く,管見の限りでは都市再開発をマクロな観点から論じた実証研究は少ない。また,実務的な内容の論考は別として,市街地再開発事業を対象とした研究のほとんどは事業化以後を分析対象とし,それ以前の都市再開発の初動期に焦点を当てた研究も不足しているのが現状である。そこで,本発表では,『日本の都市再開発』1~6(全国市街地再開発協会編集・発行)と国土交通省提供のデータを資料として市街地再開発事業をマクロな観点から分析し,同事業の実施状況を明らかにするとともに,事業化前の初動期の動向を解明することを目的とする。

 まず,市街地再開発事業の実施状況に関しては,市町村別にみると,人口規模の大きい大都市圏内の都市や地方中核都市で事例数が多い。また,年次ごとの事業完了地区数の推移をみると,年次により増減はあるものの概して完了地区数は増えてきており,バブル経済崩壊後の完了地区数が多くなっている。それらバブル経済崩壊後に完了した地区の事業費は他の時期に比して大きい。ただし,それらの多くはバブル経済期に事業化しており,いわばその時期の遺産にすぎない。それに対し,バブル経済崩壊後に事業化した地区の事業費は大幅に小さくなっており,経済情勢を反映する形で同事業が展開されてきたことが確認された。

 また,この時期の事業地区の事業費(収入)に占める保留床処分金(開発で生み出された余剰空間を販売することで得られる収入)の割合はそれ以前に比べて低下してきており,保留床処分金を収入の軸とする旧来からの同事業のフレームでは,事業の遂行が困難となってきている一端を示しているといえよう。

 同事業の実施期間(平均5年11ヵ月)をみると,5~10年の地区が全体の37%,10年以上の地区も11%を占めており,事業の長期化が問題となっている。各地区の属性と関連させて分析すると,地区面積や従前(再開発前)権利者数が多ければ事業期間も長くなる傾向が明らかとなった。しかし,必ずしもそれぞれの相関係数は高くはないことから,データには顕れない要因よって事業期間の長さが決定される部分が大きいと推察される。

 次に,市街地再開発事業の事業化を目的として実施される準備調査(A・B調査,基本・推進計画など)と,再開発計画が顕在化した始動点である「発端」に着目し,都市再開発の初動期の動向について分析を試みた。市町村別に準備調査の実施状況をみると,大都市圏内の都市や地方中核都市で事例数が多いだけでなく,人口規模が小さな自治体でも実施されている。市街地再開発事業の実施状況と比較して考察すると,多くの自治体で市街地再開発事業の実施が志向される反面,実際に事業化に至るのは人口規模の大きい自治体に限られてきたことが分かる。また,年次別の準備調査の実施状況では,1997年以降調査地区数が急激に減少しており,景気が低迷しているここ10年あまりの期間では,同事業の実施に向けての動きも鈍化してきたことが顕著に表れている。

 年次別に各地区の再開発計画の「発端」についてみると,高度経済成長期末期とバブル経済期を「発端」とする地区が多かった。しかし,前者の時期は行政施行,後者の時期は組合施行が卓越していることから,両時期の性格は異なっている。前者は都市問題の解消を目的とする行政による都市整備,後者は民間資本による都市開発への積極的な投資が背景にあると考えられる。

 さらに,「発端」から同事業完了までの期間を調べたところ,平均で12年10ヵ月の期間を要していた。つまり,前述したように同事業の平均期間は5年11ヵ月であることから,事業化前の初動期により多くの時間が掛かる現状が明らかとなった。したがって,都市再開発の実施状況を明らかにするには,初動期の動向も含めて考察する必要があると指摘できる。

 以上,データを基に市街地再開発事業の実施状況を考察した。上記で示した諸点が明らかとなった反面,データ分析のみでは十分な考察を導くことができない点も確認された。その部分は各地区の再開発の過程(「発端」から事業完了まで)を詳細に分析することで補うことができると考える。この点は今後の課題としたい。


■菊池報告に関する事実確認質疑

Q1(根田克彦・奈良教育大)どのような投資家が不動産特定目的会社(SPC)に投資するのか。また投資家は,どの程度の期間で分配金を得られるのか。

A1 不動産投資証券には,上場しているJ-REITと非上場の私募ファンドのものがある。私募ファンドへの投資は匿名であるが,主に従来から不動産開発を行ってきた会社や金融機関等が投資している。その他にも外資系企業や,ドバイやシンガポールなどの投資ファンドもある。上場している証券は,誰でも購入できるため,個人投資家も非常に多い。分配金を得るまでの期間については,開発型と既存物件の運用型で異なる。開発型は,竣工前に資金を集めるので,配当までにタイムラグがある。既存の物件を運用する場合は,株式と同様に,毎期に配当が出る。

Q2 (根田)開発型の場合は,分配金を得るまでにどの程度のタイムラグがあるのか。

A2 案件によって多様である。森ビルが開発した六本木ヒルズの場合も開発型の証券化を使っていたが,いつから配当を始めたかは分からない。ただし,実際にSPCを設立したのが2001年で竣工したのが2003年である。したがって,2,3年で配当を開始したと考えられる。


■小原報告に関する事実確認質疑

Q1(稲垣稜・奈良大)再開発の計画・意図が顕在化した時点とは,具体的にどのような時点を指すのか。

A1 基本的に,『日本の都市再開発』に掲載されている再開発の経緯に関する記述を基にしている。ただし,再開発にも多様な形態があり,たとえば組合型再開発の場合は,通常事業化される以前に準備組合や協議会が作られる。この協議会の設立時とする場合やそれ以前のインフォーマルな段階とする場合もある。

Q2(豊田哲也・徳島大)再開発の発端の所在が地元と行政にあると指摘されているが「地元」とは何を指すのか。住民とデベロッパーはともに「地元」に含めるのか。

A2 民間デベロッパーが単独で「発端」の所在となるケースは稀なため,両方とも「地元」に含めている。

Q3(山神達也・立命館大・PD研)法定再開発で主体が「個人」となる場合は,どのような状況か。

A3 個人の土地所有者が一人で行う場合に加えて,法人や少数の土地所有者が一人を代表者として行う場合も「個人」に含まれる。つまり組合や行政,再開発会社以外の主体を「個人」とする。

Q4(山田誠・龍谷大)再開発事業の事業化に,地域や規模,主体による差は認められるのか。また,付表「長期化した市街地再開発事業完了地区一覧」に掲載された以外に,事業が継続中の地区で長期化している事例もあるのか。

A4 事業化の割合が北海道や東北,中国地方は5割を切る一方で,関東では6割を超える。また大規模な再開発ほど従前権利者が多く事業化に至り難いと考えられる。現在,継続中の事業もあり,今後,一覧に掲載される地区数は増えると考えられる。


■総合討論…AAは菊池氏の回答。ABは小原氏の回答。

Q1(山神)小原報告に関して,都市再開発と市街地再開発の違いは何か。さらに市街地再開発の中でも法定再開発と任意の再開発との違いは何か。再開発は,ジェントリフィケーションやオフィスビル研究の中で,どのように位置付けられるのか。

AB1 都市再開発は,市街地再開発より広い包括的な概念になる。都市再開発には多様な形態があり,一つは,任意の再開発で,民間企業が,都市計画法の範囲内で,独自に行う再開発である。一方,法定再開発は,都市再開発法に基づく市街地開発事業である。

 また都市再開発には,建物を壊して新たに造り変えるリデベロップメントという狭義の意味と,さらに建物の一部を修復・改築するリハビリテーションおよび開発でなく保全を目的としたコンサベーションを含めた広義の意味がある。後者にはアーバンリニューアルという用語が当てられる。ジェントリフィケーションには主としてリハビリテーションが該当するが,リデベロップメントが該当するケースもある。したがって,ジェントリフィケーションと都市再開発は完全には一致しないが,重複する部分がある。これに加えて,再開発には一定の面的広がりをもち,社会的なインパクトを伴う必要がある。都心部のオフィスビル開発については,都市再開発と重複する部分もあると考える。

Q2(古賀慎二・立命館大)菊池報告に関して,オフィスビル開発のうち再開発に該当するものはあるのか。

AA2 基本的に,多くの地権者が集まる再開発は,時間もかかり採算性が悪い場合も多い。開発者側の考え方として,まとまった土地が得られ,権利関係も複雑でない土地から開発を始め,開発が一巡し,そうした土地がなくなってから再開発を行おうとする。

Q3(藤塚吉浩・高知大)小原報告に関して,再開発において社会的立場の弱い借り手はどうなるのか。再開発事業の長期化と借地・借家に関連があるのか。市街地再開発事業地区数は日本海側で多いが,これは戦後の大火の影響か。両報告に関して,都市再開発とオフィスビル開発について,事業の発端から完了までの期間と事業をめぐる社会経済状況の変化と関係があるのか。

AB3 立場の弱い借地・借家の地権者は,再開発後に転出するケースが多い。土地所有者以外の比率が高いほど,事業の長期化するケースが多くなる。

 地区数の地域差の要因は,たとえば山形県酒田市では大火の影響,兵庫県神戸市では阪神淡路大震災によるものであり,災害による影響がみられる。さらに行政の再開発事業に対する積極性も地域差を生む要因となり得る。富山市で個人による再開発が多いのは,行政がそのように誘導したのではないだろうか。

 事業期間が長期化することで,経済情勢が変わってしまい再開発が頓挫するケースは多く見られる。特に近年,バブル経済の崩壊に伴って事業が長期化した地区が多くみられる。つまり社会経済情勢の変化が,事業期間に深刻な影響を及ぼしていると考えられる。最近では,再開発において,他の補助金の利用または任意の再開発が選択される傾向にある。

AA3 事業期間は不可避であり,開発から竣工までに需要の変化を予測し難い。したがって,開発中の案件に投資する場合と開発が完了した案件に投資する場合とでは,リスクプレミアムが大きく異なる。ただし大型オフィスビル開発の増加の要因として,建築学では,主体構造を鉄骨で造るスチール構造(S造)とカーテンウォール工法の採用によって,開発期間が短縮化した点が指摘されている。

Q4(安倉良二・立命館大・非)小原報告に関して,社会経済的な文脈や時代性を念頭に置いて,再開発の事後評価を考える必要があるのではないか。また菊池報告に関して,大型オフィスビルの吸引力がオフィス集積の二極化を促した背景として,フィルタリングが指摘できるのか。

AB4 時代を意味付けて,再開発事業の評価を位置付ける必要がある。市街地再開発事業が開始され40年が経過しているが,現時点ですべての事業を評価してもほとんど意味はない。時代別または事業が完了した一定期間後に事後評価を行わなければならない。

AA4 オフィス従業者と人口とに相関があり,オフィス従業者が減少している地区で,人口が増加する傾向が都心でみられる。たとえば隅田川沿いの新川では,倉庫を兼用した卸売業者の自社ビルが取り壊されている。跡地にマンションが建設され,オフィスビルが建設されるケースは少ない。こうした事例を精査することで,フィルタリングを検証できるのではないか。

Q5(稲垣)菊池報告に関して,一点目に,なぜ東京区部に証券化事業が集中するのか。二点目に,証券化事業をマンション開発に利用するケースが,どの程度あるのか。小原報告に関して,一点目に,市街地再開発事業に立体換地の制度があるのか。通常,立体換地では保留床は発生しないのではないか。二点目に,都市計画決定がなされた後に市街地再開発事業が中止になったケースは全国的にどの程度あるのか。

AA5 一番大きい要因は流動性である。つまり取引量が多く換金し易い地域に証券化事業が集中する。ただし投資はポートフォリオの分散が基本であり,東京に集中した投資は適当でない。そのため国内の投資家でも分散投資の意向が強い。ただし分散先が,日本の地方都市の他に海外の都市にも向いている。

 また,諸外国では住宅の方が,証券化が進んでいる場合も少なくない。例えばフィンランドではREITによる証券化は住宅しかできないような規制もある。日本の場合もマンションの証券化は少なくないが,土地の維持・保有を目的にアパート経営を行う地主は,ほとんど儲からなくてもよいと考えているため,全体として住宅の収益性が高まらない。
AB5 権利変換が,立体換地を踏まえて作られている。平面的な土地所有を床に相当させる基本的な考え方が共通するという意味で示した。大和西大寺駅前の例を含め,事業化されてから,事業が中止となったケースは相当数ある。

Q6(根田)菊池報告に関して,最近では,保留床の売却による収益が減少し,補助金で補てんしているが,問題はないのか。また会社型不動産証券化について,配当金が得られるまでタイムラグがあるとすると,誰がどのような意図で投資しているのか。今後,証券化によって,大規模なオフィス開発に参入できる企業が増加するのか,または大企業に集約されるのか。

AB6 実際に保留床が売却できず再開発事業が頓挫したケースも多い。事業が完了した地区のうち,保留床売却金等の割合が8割を超える地区は大幅に減少している事実がある。最近では,国などからの補助金を前提にスキームを計画している。今後,補助金が縮小するような場合,再開発事業が頓挫する可能性も高い。

AA6 開発型の場合も,原則,十分なリスクプレミアムを上乗せした利回りが確保できれば,銀行や不動産会社,個人など誰でも投資する。しかし,利回りが高いとリターンも高いため,開発した後が問題になる。証券化されたビルは,周辺の賃料上昇を即座に賃料に反映させる一方で,賃料はなかなか下げさせない。そのため日本的な賃貸経営になり難いと言われている。

 2008年までは新興のデベロッパーが多く出てきたが,大手銀行や財閥系の不動産会社がそれらに保証をつけていた場合も多いと聞く。資金調達においてレバレッジを効かせるには,やはりある程度の信用力や規模がないと難しい。

Q7(豊田)両報告に関して,大規模な開発には地下鉄や都市基盤の整備に税金が投入される。都市整備を行う行政から見た場合は公共性が,デベロッパーからみた場合は利潤や収益性が重要となる。その場合,開発資金に税をどの程度投入するのか,証券化によって資金を調達する方がふさわしいのか,公共性と資本の収益性の観点から,一言ずつコメントをお願いしたい。

AA7 現在,金融機関などの間接金融の役割が変質しつつあり,市場から直接資金を調達して都市開発を行うことは,いずれにしても必要不可欠である。ただし、マネーゲームにならないような規制や政策も今後,検討する必要がある。また証券化は,再開発や土地区画整理事業と相性がよいと言われている。保有地を売却できず事業費を捻出できない案件を証券化することで,事業化が成功した例もある。

AB7 再開発事業では,行政の代わりに道路や公共施設を整備している。そうした公共性があるため,補助金を投入するという考え方である。一方で,事業完了後の収益は,民間企業が得る。こうした潜在的に利潤を生み出す開発に補助金を使用することが適切かといった問題は以前からある。たとえば,阪急による大阪市茶屋町地区の再開発は組合施行であるが,阪急が最大地権者かつデベロッパーであるため,公的な資金を投入することへの疑問が大阪市議会で出されている。しかし,これまで公共性の観点から踏み込んだ議論はなかった。都市空間を造る手法として再開発考えた場合,公共性について十分に議論しなければならない。

(参加者:16名,司会:古賀慎二,記録:花岡和聖)
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2010.01.15 
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