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    日 時: 2010年65日(土)10:30~12:00
    会 場: 高知市立自由民権記念館 [ホームページ]
         高知市桟橋通4丁目14-3
         電話:088-831-3336(午後開催の特別例会と同会場)

発表:
  内田忠賢(奈良女子大)
    増殖する都市祝祭の意味と構造
       ―よさこい系祭り研究―

  共催:高知市立自由民権記念館・高知県高等学校教育研究会地理部会
  後援:高知県教育委員会

  会場までの交通機関 
    路面電車 土佐電気鉄道「桟橋通4丁目」または「桟橋車庫前(自由民権記念館前)」下車。
    バス 土佐電鉄・ドリームバス 「桟橋車庫」行きにて「桟橋通4丁目」下車。
       高知県交通 「桂浜」「長浜」「仁野」「横浜」行きにて「桟橋通4丁目」下車。

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■報告要旨   
増殖する都市祝祭の意味と構造
―よさこい系祭り研究―
内田忠賢(奈良女子大)

 この報告では、「よさこい系祭り」と総称される都市祝祭が帯びる意味と、都市祝祭の動向を俯瞰した場合の構造について紹介する。民俗学や文化人類学において、都市祝祭という用語での「都市」には「現代」という含意がある。一方、「祝祭」はミル、ミセル、楽しむ要素が強い祭りを指す。伝統的な祭礼に関する研究に比べ、都市祝祭をめぐる研究は歴史が浅い。この研究で、報告者は文化人類学や民俗学に近い立場で、調査・研究してきた。狭義の地理学的な視点よりも、興味深い事実、側面を指摘できるからである。今回は、地理的な視点を強調しながら、映像を駆使して話題提供してみたい。

 全国各地で行われる「祇園祭」をはじめ、長い時間的スパンで伝播した伝統的祭礼は確かに存在する。しかし、現代の都市祝祭は、ごく短期間で驚くべき増殖力を示した。1970年代の首都圏での「阿波踊り」、1980年代の各地での「サンバ」や「ねぶた」、そして、1990年代後半以降の「よさこい」である。特に、「よさこい」は10年余の間に、全国約800ヶ所に伝播したと推測される。「よさこい」の伝播では、人から人へ、ある町から近隣の町へという単純な伝播では必ずしもない。インターネットなどによる、各種情報をもとに、各地の人々が独自に立ち上げた場合も少なくない。

 1954年、高知市で地域活性化のため始められたイベント「よさこい祭り」は約40年間、どこにも伝播しなかった。集団による踊りの競演イベントである。しかし、1992年、高知を参考に札幌市で始まった「YOSAKOIソーラン祭り」が大成功したことをきっかけに、全国各地で、雨後のタケノコのように「よさこい系祭り」が開催されるようになった。両手に鳴子という簡単な楽器を持ち、踊りの曲のごく一部に民謡を入れればよく、チームごとに、振付・衣装・音楽など何でも自由という「よさこい系祭り」は、時代にマッチしたせいか、大増殖中である。ド派手な衣装と踊り、うるさいほどの大音響が「よさこい」の代名詞である。全国の踊り子総数は200万人以上だという説もある。道路や公園を会場とするため、ハコモノが要らず、バブル経済崩壊後の各地の自治体や商工会議所は、地元のイベントに「よさこい系祭り」を積極的に取り入れた。

 報告者は1992年以来、17年間、観察や資料収集だけではなく、参与観察しながら、このイベント群に関わってきた。踊り子はもちろん、チームスタッフ、主催者側スタッフなどの立場から、客観的ではなく、体験に基づく実感を心がけ、このイベント群の意味と構造を考えている。実際、統計的な数値を眺めただけでは分からないことが、体験を通して分かってきた。

 「よさこい系祭り」に参加するチームの多くは、選択縁という結合契機による社会集団である。地域のイベントだから地縁だと判断すること、また、企業・学校名を冠しているから社縁(結社縁)だという判断も早計である。各チームとも、かなり広い範囲からの参加者で組織されており(札幌の強豪チームでは、東京・大阪など他地方から、踊るために引っ越した者も少なくない)、しかも、チーム内での人間関係としては緩やかなネットワークの場合が多い。

「よさこい系祭り」の参加チームも、開催地近辺だけでなく、遠方からの参加も少なくない。各チームとも、週末ごとに全国各地で開催される「よさこい系祭り」を選び、渡り歩くように参加する。開催地と参加チームの拠点は必ずしも一致しないし、逆に、各チームは拠点とする町に必ずしもこだわらず、参加するイベントを自由に決める。たとえば、A商店街のチームであっても、Aとはまったく無縁な踊り子が多く、また、B市で開催されるイベントであっても、市外・県外から、多くのチームが参加する場合も少なくない。

 その一方、地域へのアイデンティティーの涵養力が低いかと言えば、そうではない。各チームとも、毎年創作する踊りには、拠点とする町の特色を、曲、振付、衣装などに盛り込もうとする。ただ、その町にのみこだわることはなく、その年の踊りのコンセプトに合えば、積極的に(節操なく)何でも取り入れる。たとえば、千葉県のチームであっても、(神奈川県の)「箱根馬子歌」や、(熊本県の)「牛深ハイヤ」などの民謡を、踊りの一部に取り込もうとする。また、各地の「よさこい系祭り」には、参加者全員が踊る「総踊り」を創作する場合が多い。開催地の特色を盛り込み、地域へのアイデンティティーを養おうとする。たとえば、平成の大合併でできた町を盛り上げるべく、2008年に始まった「南アルプスよさこい」(山梨県南アルプス市)では、アルプスの峰々、清らかな河川、サクランボなどをイメージさせる振付や歌詞の「総踊り」を創った。報告者自身、お茶の水女子大に在職時、千葉県のチームで踊ることを通じて、千葉都民(千葉県在住ながら勤務先の東京にアイデンティティーを持つ県民)から千葉県民へと地元意識が確実に養われた。

 「よさこい系祭り」相互の系譜は多様かつ複雑であり、しかも、影響関係という程度の伝播が多いものの、高知、札幌から全国約800ヶ所に増殖した。海外各地にも伝播し、たとえば、ブラジルの主要都市、特にサンパウロでは、「YOSAKOI SORAN」という踊りのジャンルとイベントが定着した。その際、インターネットや各種メディアの普及が果たした役割は大きい。この図式は、確かにグローバル化の文脈で語ることができる。一方で、上で紹介したローカル化の動きも見逃せない。では、元祖・高知や本家・札幌に必ずしもこだわることなく、「この町・地域が、よさこいの新しいメッカだ!」という意気込みの拠点づくりが、各地で行われている。仙台市(みちのくYOSAKOIまつり)、朝霞市(関八州よさこいフェスタ)、名古屋市(にっぽんど真ん中まつり)、佐世保市(YOSAKOIさせぼ祭り)など、大規模な「よさこい系祭り」はもちろん、関東ならば、4県での拠点、ネットワークづくりが盛んになった。短期間で増殖したため、元祖・本家をさほど意識する必要もない、自由さ、緩やかさが特色の「よさこい」らしい動向である。「よさこい」の独立島を目指す千葉県では、総踊り「ちばYOSAKOI島」を創作したのに次いで、「よさこい」のローカル・コミュニティを志向して2010年には総踊り曲「ちばYOSAKOI村」を発表した。

 「よさこい系祭り」の意味と構造を考えることは、現代の祝祭を論じるだけでなく、都市の社会や文化の動向を知る格好の素材となる。

■質疑応答…Aは内田氏の回答
Q1(山口 覚:関西学院大)よさこい系祭りは伝統的な民俗学研究では対象とならないということであった。しかし、踊りという行為に着目すると、竹の子族、ディスコなどとの関係から、よさこい系祭りをどう考えられるか。

A1 民俗学では、歴史と伝統を持たないよさこい系祭りは研究対象とならなかった。ただし、最近は民俗学の学界展望では、伝統行事が消滅しつつあるので、最近のものも研究しようとの論調がある。 次に、踊りということでは、よさこい系祭りはヤンキー文化とよく説明されるが、ヤンキーと云われる要素をひとつひとつ吟味すると、ヤンキー文化とはいえない。また、よさこい系祭りの振付師などに話を聞くと、竹の子族との系譜はまったくないといえる。

Q2(香川貴志:京都教育大)私は地理学が何かとしばしば問われる。よさこい研究で、地理学の独自性、視点をどのように位置付けているのか。社会学や民俗学との違いをどのようなスタンスでとることができるのか教えてほしい。次に、よさこい系の祭りの空間的類似性、イノベーションの研究、どのような人が介在しているかなどの研究を行うと地理学的になると考えるが。

A2 私は地理学のことはあまり考えていない。しかし、地域とのかかわりと地域の表現の仕方にはこだわっている。地域らしさ、地域の活動に注目してしまうので、その点では地理学的かもしれない。 どのように伝わるかという点では、基本的にインターネットを介在させたり、商工会議所の人が見学して伝えるなど、思わぬところに飛び火している。その際のメカニズムに関しては、熱心なリーダーの存在による。また、内容に関しては、高知のよさこいではなく、札幌のよさこいを継承している例もあり、どこから伝わったとは一概にいえない。

Q3(伊藤拓榴:高知大・学生)私も踊り子である。よさこいを演じる際にはエクスタシーを感じ、普段の自分と違うハレの日の自分であると感じている。その点で、伝統的な祭りの感じ方と通じているのではないかと感じるが、その点についてどう考えるか。よさこい系祭りには市民主導のものと官主導のものとがあるが、それらにはどのような違いがあるのか。評価にもよるだろうが、どちらがうまくいっているのであろうか。

A3 市民主導でも基本的にリーダーは商工会議所関係者であった。これは資金集めのノウハウを持つからである。なお、みちのくよさこいの場合は、高知大学の卒業生が帰郷してリーダーになったが、彼は商工会をまとめた。
 最初の質問に関してだが、私も踊っているときはエクスタシーを感じる。しかし、研究する際には、一歩引いて、どこにポイントを置くと説明しやすいのかということである。なお、よさこいは創作した踊りを楽しめるが、伝統的な踊りは決まった型をきれいに見せるという点では違いがあるように思える。

(参加者36名、司会:藤塚吉浩、記録:根田克彦)
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2010.07.13 
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