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   日 時: 2011年528日(土)14:00~17:00
   会 場: 法政大学市ヶ谷キャンパス ボアソナードタワー26階 A会議室 
                              [会場へのアクセスはこちら]

テーマ:「統計からみる東京大都市圏と京阪神大都市圏」

発表:         
  小泉 諒(首都大・院)
    バブル経済期以降の東京大都市圏における空間構造とその変化
  桐村 喬(立命館大)
    1990年代後半以降の京阪神大都市圏における居住地域構造の変容
       ―ジオデモグラフィクスを用いた検討―

趣旨:
 2つの大都市圏(東京大都市圏・京阪神大都市圏)それぞれの変化・現況について、統計データやGISを駆使して研究を展開されている若手お二人に話題を提供していただき、皆さんと議論を深めたいと考えております。

連絡先:小原丈明(法政大)、E-mail:take-kohara#hosei.ac.jp (#を@に置き換えて下さい)

第39回都市圏研究部会ポスター
[ポスターのダウンロード(PDF形式、外部リンク)]
(掲示用にご利用下さい)


■報告要旨(以下のリンクをクリック)
バブル経済期以降の東京大都市圏における空間構造とその変化
小泉 諒(首都大・院)

 東京大都市圏の空間構造とその変化については,都市地理学のみならず都市社会学からも研究が蓄積されており,近年は「世界都市論」や「階層分極化」などの視点から取り組まれている。しかしながら,これらの研究のほとんどが市区町村単位のデータを用いており,空間的パターンの把握については厳密さに欠けるところがある。そこで本研究では,バブル経済期以降の東京大都市圏における空間構造とその変化を,地域メッシュ統計を用いて捉え直すとともに,近年に報告されている「郊外化の終焉」や「都心回帰」と関連させ,その背景を探ることを目的とする。

 これまで社会的分極化を示す指標として,日本では所得指標の代替として職業構成が多く用いられてきた。そこで本研究では,ホワイトカラー従事者数とブルーカラー従事者数に加え,サービス経済化で重要になっているグレーカラー従事者数を採用する。これらの経年比較を行うために,国勢調査結果(1985~2005年の5時点)の分析を行う。分析にあたっては,長尾(1996)による拡張シフトシェア分析の競合効果を用いる。競合効果とは単位地区の部門構成が対象地域全体と同様であると仮定した場合の成長力を示し,地域独自の成長量を示すことができる。また,この空間的なパターンを客観的に把握するために,空間的自己相関指標(ローカル・モラン統計量)を用いる。対象とする地域は,東京駅を中心とする半径50km圏とし,これに一部でも含まれる人口200人以上の地域メッシュ(第3次地域区画)とした。地域メッシュ統計を用いることで,市町村合併などの影響を回避した経年比較が容易になり,距離帯や鉄道路線などに基づくローカルな地域的傾向も把握できる。

 分析の結果,職業構成の空間的パターンの基本は15km圏でのセクター状,15~30km圏での放射状であり,グレーカラーの分布は男女で大きく異なることが示された。経年変化を分析すると,地価が高騰した1985~1995年は,大都市圏西部の郊外ではホワイトカラーが増加し,東部ではブルーカラーが増加する外延的拡大がみられた。しかし1995年以降は,ホワイトカラーの増加が都心部の10km圏内でみられ,横浜や川崎の業務地区,JR南武線沿線などでも顕在化した。一方,かつてホワイトカラーの受け皿であった郊外の大規模開発地は,ブルーカラーやグレーカラーの受け皿になっている。これらから,職業構成からみた空間的な「分極化」が都心部で,「混住化」が郊外で進んでいることが明らかになった。

 地域メッシュ統計では,職業と年齢のクロス表が存在しないため,職業構成の変化と人口増減との関係は直接的に分析できないが,これらの関連は深いと考えられる。そこで,各期間での人口増減のコーホート分析を行ったところ,期首年25~34歳が期末年30~39歳となる住宅取得世代に顕著な変化がみられた。これらコーホートの増減は住宅取得目的の移動が主因と考えられるが, 2000年以降には郊外での増加が沈静化し,都心ならびに都心周辺部,湾岸部で大幅な増加が確認された。

 以上より,本研究が対象とした1985年から2005年において,職業構成の空間的パターンの変化と,住宅取得年代の人口増減には対応関係が確認された。2000年以前には,人口増加とホワイトカラー化は郊外でみられたが,2000年以降には,都心ならびに都心周辺部で顕著となった。これら地域の年齢構成には,家族構成や婚姻関係に起因すると考えられる地域差がみられ,住宅供給や住宅ストックが規定因として作用している可能性が高い。今後は,世帯形成規範の変化に留意しながら世帯類型や婚姻関係に基づく分析を進め,工業化社会を想定した従来の社会地区分析の枠組みの再考も目指したい。

付記:本研究は,東京大学空間情報科学研究センターの研究用空間データ利用を伴う共同研究(研究番号243)による成果の一部である。

1990年代後半以降の京阪神大都市圏における居住地域構造の変容
―ジオデモグラフィクスを用いた検討―
桐村 喬(立命館大学衣笠総合研究機構研究員)

 1990年代後半以降,日本の大都市圏の都心は顕著な人口回復を経験した一方で,郊外住宅地における高齢化の問題も深刻度を増している。近年の大都市圏の都心および郊外におけるこれらの動向は,職業構成や年齢構成を中心とする居住者特性の空間的なパターンの変化や,世代の交代や高齢化による人口増減というかたちで,大都市圏全体の居住地域構造の変容に対して影響を与えているはずである。一方,都市地理学だけでなく都市社会学を含めて,既往研究の多くは東京大都市圏を取り上げており,他の大都市圏における近年の居住地域構造の変容に関しては,十分に検討が加えられているとはいえない。そこで,本発表では,ジオデモグラフィクスと呼ばれる小地域単位の居住者類型を利用して,京阪神大都市圏を対象として1990年代後半以降の居住地域構造の変容について検討し,その詳細な動向を明らかにすることを目的とする。なお,京阪神大都市圏の範囲は,京都市・大阪市・神戸市の各市役所から半径50キロ圏内とする。

 まず,1995年,2000年,2005年の各国勢調査町丁・字等別集計結果から,自己組織化マップ(Self-Organizing Map: SOM)を利用して類型化し,ジオデモグラフィクスを作成する。このジオデモグラフィクスは,将来的な他の大都市圏との比較分析を視野に入れ,日本全国を対象として作成した。そして,ジオデモグラフィクスを利用して,小地域単位の居住者特性の変化とそれに伴う人口増減を検討し,居住地域構造の変容を分析した。

 分析の結果,1990年代後半以降の京阪神大都市圏では,主に30km圏内における若年の単身者およびファミリー層の拡大と,都心および郊外における高齢化の進行が確認できた。拡大した若年層の中心は管理職以外のホワイトカラーと販売職であり,これらの居住者特性をもつ地域では顕著な人口増加を確認できた。一方で,高齢化に関しては,1995年時点においてホワイトカラーのファミリー層の多かった郊外での緩やかな進行がみられた一方,都心においてもインナーエリア的な性格を備えた地域の拡大と急激な人口減少を確認できた。これらのことから,京阪神大都市圏の都心では,若年層の増大による人口増加が,高齢化による人口減少を上回り,都心での人口回復が生じたものと考えられる。

 これらの結果を踏まえつつ,2005年時点のジオデモグラフィクスを利用して,京阪神大都市圏と東京大都市圏における居住者特性の空間的パターンについて若干の比較を行なった。京阪神大都市圏では若年の単身者およびファミリー層の多い地域は必ずしも鉄道路線との対応関係が明らかでなく,東京大都市圏ほど明瞭な対応関係ではない。また,インナーエリアの拡大は京阪神大都市圏で特に顕著であることが確認できた。このような京阪神大都市圏の特徴的なパターンの形成要因には,近年の変容だけでなく,従前の居住地域構造の差異も関係しているものと考えられるが,明確な答えを導き出すことはできなかった。

 1990年代後半以降の京阪神大都市圏においては,都心では若年層の流入とインナーエリアの拡大による高齢化が,郊外でも若年層による世代交代と高齢化が,それぞれモザイク的に展開し,居住地域構造を複雑に変容させたといえる。今後は,居住地域構造の変容およびその背景に関する他の大都市圏との詳細な比較や,事業所・企業統計データや土地利用データなどの他のデータとの重ね合わせから,住宅地としての開発時期の特定や,周辺の従業地,商業環境との関係性などを検討していく必要がある。

 なお,本研究は,東京大学空間情報科学研究センターの研究用空間データ利用を伴う共同研究(研究番号111)による成果の一部である。

■小泉報告に関する事実確認質疑
Q1(香川貴志・京都教育大)1985~2005年に管理的職業従事者数が約26万人,構成比で2ポイント以上低下しているが,この理由を知りたい。
A1 同数値は国勢調査結果によるが,管理的職業に位置づけられる自営業者や中小企業経営者数の減少,さらに比較的年齢の高い層の退職者が2000年以降目立つので,それらの複合的要因ではないかと考えられる。

■桐村報告に関する事実確認質疑
Q1(富田和暁・大阪商業大)今回の発表では625の類型を7グループに分けてそれぞれ名称をつけているが,そこで用いられた若年・中高年・高齢とは,具体的にどの年齢層に該当するのか。
A1 若年は25~29歳と30歳代,中高年は40歳代・50歳代,高齢は60歳代・70歳代が該当する。

Q2(富田)高齢が60歳代・70歳代だとすると,一般的に退職者層にあたる高齢にホワイトカラーを加えた「高齢ホワイトカラー」という名称は,どのように理解すれば良いのか。
A2 グループ名称は,類型の特性に鑑みて大まかにつけた名称であるので多少無理があるかもしれないが,高齢ホワイトカラーが析出される地区は,奈良県の学園前や兵庫県の芦屋・苦楽園など高級住宅地に認められるので,60歳代以上であっても会社の役員クラスが多い地区と解釈でき,妥当性はあるように考えられる。

■総合討論(AKOは小泉氏の回答、AKIは桐村氏の回答)
Q1(香川)統計の集計方法と関連する点について伺いたい。小泉氏はメッシュ内の構成比を用いて主に議論していたようだが,ある数値の実数値が減少しても構成比が上昇することがあるし,その逆もあるだろう。そうした点からみて,気づいたことを教えて欲しい。また,桐村氏は町丁・字等単位の統計を利用し,時系列分析の際はその面積が70%重なる地区を比較可能な対象地区として抽出していた。そうすると,近郊から郊外にかけての新しい住宅地や区画整理が実施された地区などが対象地区から漏れてしまうという懸念があるがいかがか。
AKO1 例えば,東京特別区の西部においては,実数値としてホワイトカラーが減少しているものの他の職種を含めた全体の就業者数も減少しているためホワイトカラー比率が高くなるという相対的ホワイトカラー化という現象や,郊外の一部ではホワイトカラー数が増加していてもブルーカラーがそれを上回る増加を示しているため,相対的にブルーカラー化が進展している状況などが近年認められる。
AKI1 分析期間である1995~2005年に,新しく造成された住宅地などで町丁界が変更された場合,分析から除外されるのは指摘された通りである。ただ,そうした場所はそれほど多くないと考えられる。いずれにしても大都市圏全体の変容にどの程度影響しているのかについては,再検討してみたい。

Q2(谷 謙二・埼玉大)自己組織化マップ(SOM)について,625類型を地域に割り当てる際のロジックを解説して欲しい。
AKI2 今回分析対象とした58万余りの町丁・字は,39の変数情報を有しており,625類型1つひとつも同様に39の変数情報を有している。この2つの情報の非類似度が最も小さくなるものを地区の類型として割り当てる作業を行っている。

Q3(安倉良二・立命館大非)大都市圏の郊外就業についてはどのような傾向が読み取れるのか。また,新自由主義的政策の影響についてはどう考えられるのか。
AKO3 郊外就業について,ODデータを使った分析はしていないが,近年住宅取得の選択肢が拡がり通勤距離は短距離化していると認識している。また,女性就業率の上昇もある。これらの状況と大都市圏郊外におけるブルーカラー化の傾向とがどのように関係しているのかを今後分析していきたい。新自由主義的政策の影響については,都市再生特別措置法が施行されたのが2002年であり,また各種規制緩和政策が取られてからもそれほど時間が経っていない。今回の分析期間は2005年までであるため,その影響がクリアに反映されるところには至っていない。今後注視していきたい。

Q4(小原丈明・法政大)小泉報告について,相対的ホワイトカラー化が進んでいた地域が絶対的ホワイトカラー化する地域へと変化するなど,ある特定の傾向がみられるエリアについて,細かな時期区分や変化パターンの分析は可能なのか。
AKO4 分析に用いた統計には,年齢階級と職業のクロス集計がないため,詳細かつ正確な分析はできない。こうしたデータの制約を克服する分析手法がないか検討してみたい。

Q5(根田克彦・奈良教育大)両報告とも市区町村よりも小さな集計単位の統計を利用しているので,大都市圏の中心部と郊外という関係とともに,郊外における中心地と周辺部との関係も捉えられると考えられる。そうした観点から大都市圏の居住地域構造の変容についてコメントして欲しい。
AKI5 郊外における小規模な中心地と周辺部の関係性や変容について,ジオデモグラフィクスとしてどれだけ捉えられるかについては技術的には可能であるが,郊外の中心地は非常に小規模になると思われるので,試行してみないと何ともいえない。
AKO5 近年では大都市圏の中心部と郊外との関係よりも,郊外における中心地と周辺部との関係が強くなる地域がみられるようになってきていると推測している。これは商圏だけでなく,郊外就業の傾向からも読み取れるのではないかと思われる。

Q6(中澤高志・明治大)桐村報告について,SOMという手法で,2時点間の変化を学習させて変化パターンを分析することは可能なのか。
AKI6 変化を学習させることは可能である。SOMはアルゴリズムが柔軟なので,学習を繰り返すことによって特徴を学ぶという基本的原則さえ守れば,どういうパラメータを学習させても基本的には分析可能である。

Q7(富田)東京大都市圏や京阪神大都市圏では,どちらも中心部での人口回帰が近年の特徴であり,それには女性,特にシングル女性の増加が寄与しているといえる。こうした中心部での女性の居住者増加と職業構成や住宅供給との関係において何か指摘すべきことがあるか。
AKO7 男性よりも女性の方が,より中心部に居住する傾向があることは読み取れる。また,ホワイトカラーのなかでも,事務職ではなく専門・管理・技術職の女性が早い段階で中心部に居住するようになったといえるのではないか。これには,彼女達をターゲットとした住宅供給が中心部で盛んになったことと関係している。ただし,その住宅が分譲か賃貸かの区別については,賃貸物件のデータ把握が難しいため明確なことは不明である。また,東京の中心部では女性の晩婚化・非婚化の傾向は続くのではないかと予想される。
AKI7 今回は,特に女性に注目した分析を行わなかったので明確なことはいえない。ただ最近の国勢統計区別の人口動態をみると,京都では女性を含めた学生が利便性の高い中心部に住む傾向に変わってきているように思われる。

Q8(古賀慎二・立命館大)東京圏でみられる現象は数年のタイムラグをおいて京阪神圏でもみられるとよくいわれ,超高層マンションの建設事例などでもそうした傾向があるといえる。居住地域構造の変化という側面からみて,東京圏での動きが京阪神圏でも同様にみられると考えられるのか。
AKO8 可処分所得の大きい住宅取得層や家族世帯のコーホートの割合が非常に高いのが,東京圏の特殊性だと考えられる。また,東京圏では住宅市場の供給量が人口規模の差以上に大きいといえるため,現象としては同じ傾向がみられる可能性はあると思うが,そのスケールは京阪神圏では限定的といえるだろう。
AKI8 7グループの分布をみると,東京圏はグループごとの集塊的な分布が一定の空間的拡がりをもって認められるが,京阪神圏ではその空間的範囲が狭く,モザイク状の展開になってきている。したがって,大都市圏を全体的にみると京阪神圏は東京圏ほど居住地域構造の変化は明確ではないといえる。

Q9(香川)小泉報告について,バブル経済期の住宅供給が遠郊化したことを踏まえて質問したい。当時の住宅取得層の子世代が離家して都心に移動し,それが最近の居住地域構造に影響していると考えて良いのか。
AKO9 今回の分析では,人口移動について直接的には言及できない。あくまで東京特別区北西部での人口減少と都心部での増加がみられることに留まるものである。

Q10(香川)桐村報告について,東京圏に比べると京阪神圏では居住地域構造の形成において鉄道の影響は小さいとのことだが,具体的にはどういう理由によるものと考えられるのか。
AKI10 東京の都市規模の絶対的な大きさによって,東京と郊外を結ぶ鉄道路線を使った人口流動量が圧倒的に大きくなることが作用していると考えられる。

(司会:小原丈明,記録:古賀慎二,参加者:27名)

 第39回研究会

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2011.06.07 
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