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第55回 都市圏研究部会

日 時: 2015年10月17日(土) 14:00~17:00

会 場:明治大学・駿河台校舎研究棟4F第2会議室
会場へのアクセスは、以下をご参照下さい。
https://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/access.html

テーマ:現代都市の「住宅問題」―東京圏と地方都市

趣 旨:住宅をめぐる問題は,都市研究の重要テーマであり続けてきた。東京一極集中と少子高齢化の進展によって、住宅問題はその要因や帰結に地域差を孕みながら新たな局面に至っている。本部会では、東京圏と地方圏をフィールドとしてこれらのテーマに取り組んできた2名の研究者を招き、議論を深めたい。

研究発表:2000年代以降の東京都心部における住宅供給と人口増減の地域的対応
・・・・・・・・・・・・・・・・・小泉 諒(神奈川大学)

地方都市における空き家増加のメカニズム―宇都宮市を事例に―
・・・・・・・・・・・・・・・・・西山弘泰(九州国際大学)

連絡先:久木元美琴(大分大) E-mail: kukimoto#oita-u.ac.jp (#を@に置き換えて下さい)

<報告要旨>

■2000年代以降の東京都心部における住宅供給と人口増減の地域的対応
小泉 諒(神奈川大学)
 1990年代後半以降の東京都心部における人口増加や住宅供給,居住者特性に関して様々な研究が蓄積され,東京大都市圏の空間構造への影響が議論されている。本研究では,1990年代後半以降のマンション供給と人口動態を分析し,2000年代以降の都市圏構造への影響を考察することを目的とする。
 東京都心部における平均分譲価格と平米単価の推移を示すと,その関係の変化から,研究対象期間は3区分された。首都圏では,1994~1996年と1999~2005年には8万戸を上回る大量供給がみられたが,2006年以降は急減し,2009年には4万戸を下回った。その翌年には4万戸を回復したものの,供給は未だ低水準である。地域別の供給動向としては,埼玉県と千葉県におけるリーマンショック以降の回復の遅れが指摘できる。供給戸数を部屋数別にみると, 3LDKを典型とする3部屋タイプが全供給の約7割を占めているが,2006年以降は3部屋以上のタイプの供給戸数が大幅に減少している。
 また2000年代後半以降,地価上昇や建設費増大等により,都心部のみならず物件価格が高騰している。一次取得層向けとされる4000万円以下の物件が全供給に占める割合は2007年に50%を割り込み,2014年には33.1%にまで落ち込んだ。住宅取得を促進させる税制として,住宅ローン金利と最大控除額が市況を反映して変動しているが,最大控除額と専有面積平米単価の関係を分析すると,1990年代後半~2000年代前半と2000年代後半以降で異なる関係が示された。
 続いて住宅取得に重要な年齢層と指摘される30代と40代の人口動態(2014年)を分析した結果,23区全体としては流出超過であるが,都心3区や湾岸部など13区で流入超過であることが示された。住宅の所有形態別の平均世帯収入をみると,基本的に持家率と平均世帯収入には正の相関がみられるが,都心3区では高収入世帯の持家率が他地域に比べて低く,この地域における賃貸市場の果たす役割の大きさが示された。
 以上より考察すると,上記のような変化は特にミドルクラスのファミリー世帯の持家取得に影響を与えると考えられる。1990年代後半から2000年代前半は,複数の条件が重なったことで,それまで都心部ではみられなかったアフォーダブルな物件が大量に供給され,住宅取得税制の充実も相まって都心部での持家取得が可能となっていたといえる。しかし2000年代後半以降の住宅価格高騰は,都心部での持家取得を望む世帯に一層の世帯収入の確保を必要とさせ,共働きの必然性を高めている。そのため都心部での持家取得が困難と判断された場合,共働きの就業継続に困難が大きいとされてきた郊外で持家を取得するのか,それとも就業継続を優先し持家取得を先送りないし諦める等の判断に迫られると考えられる。このような状況は,居住地域構造をはじめ大都市圏構造へ影響を及ぼすと考えられ,今後さらなる分析が必要である。

■地方都市における空き家増加のメカニズム
―宇都宮市を事例に―
西山弘泰(九州国際大学)
 近年,空き家の増加によって発生する諸問題(以下,空き家問題)が社会的に大きな関心を集めている。国土交通省が行った試算では,2040年に全国で1335戸,約4戸に1戸が空き家になるという。この空き家問題は,2012年ごろからマスコミなどで大きく取り上げられるようになり,それに呼応するかたちで自治体も空き家の適正管理に関する条例を相次いで施行している。とはいうものの,空き家に対する関心がここ数年で一気にクローズアップされ,いわばブームやパニックの様相を呈していることは否めない。「空き家」という言葉の中身が全く整理されないまま一人歩きし,空き家に対するぼんやりとした不安が市民の危機感を煽っている嫌いがある。本研究は,空き家を詳細な実態調査に基づき,地方都市の空き家問題の本質は何かを明らかにするものである。
 本研究では,栃木県宇都宮市を事例とし,宇都宮市が2013年度に実施した空き家実態調査(空き家の悉皆調査)によって把握された戸建や店舗併用の空き家4,635件を対象に分析を行った。宇都宮市は東京から北方約100kmに位置する中核市である。人口は約52万人で,市域の大部分は平野か緩やかな丘陵地になっており,市街地の拡大が比較的容易なことが特徴といえる。また北関東工業地域の中核的な工業都市でもあり,郊外や市隣接地には大規模な工業団地や工場がいくつも立地している。
 まず,空き家実態調査による空き家の分布をみてみると,1970年までに都市化した地域,すなわち中心市街地とその周辺(以下,既成市街地)において空き家が多かった。では,どうして中心部で空き家が多いのだろうか。
 その要因は,第1に宇都宮市を含めた地方都市の住宅市場から説明できる。大都市圏はともかく,多くの地方都市では圧倒的に戸建住宅志向が強い。それは郊外において地価が安く,場所や住宅メーカーを選ばなければ1,000万円台で購入可能だからである。一方,既成市街地ではそもそも空き家を解消する上で重要な中古住宅の流通が少ないことに加え,ニーズに合致しない住宅も多く,価格も高い。
 第2に地方都市における都市構造の問題である。宇都宮市は道路交通網が高度に発達し,典型的な自動車依存都市である。郊外にはロードサイドの商店街が軒を連ね,自家用車を利用すれば短時間で複数の店舗を回ることができる。一方,既成市街地はスーパーマーケットなどの生活関連施設が少なく,生活が不便である。狭隘道路が多いことから自動車の利用にも適していない。
 以上のように,地方都市の空き家発生の最大の要因は,過度の自動車依存の交通体系とそれに合わせた生活関連施設の郊外移動による都市構造の変化である。そうした都市構造が居住の郊外化をより促進させることで,既成市街地の空き家増加を促進していると結論付けられる。この都市構造の変化こそが地方都市の空き家問題であり,今後の地方都市の持続可能性を揺るがす大きな問題となっていくことを危惧している。

■討論(AKは小泉氏,ANは西山氏の回答)
Q1(久木元美琴・大分大):(小泉報告に対して)東京圏において子育て世帯が住宅取得しにくくなっていることを指摘されたが,過去と比較した場合どのような違いがあるのか。また、他の大都市圏と比べて東京圏固有の状況とはどういうものがあるか。
AK:過去と現在の違いについては,東京圏においては東京圏出身者割合が非常に高く,そもそもの住宅取得の発地が大都市圏内であるという点で,郊外第1世代とは大きく異なる。また男女雇用機会均等法を背景に,女性のキャリア継続の実現可能性が高まってきたこともあり,女性の職の層が厚い。つまり高給女性も増加していることが,これまでとは大きく異なる特徴といえる。東京圏の固有性については,1980年代以降における東京一極集中が重要と思われる。特にハイクラスの女性の集中と,グローバルマネーの流入が,他の大都市圏にはない東京圏の固有の特徴と考えられる。
Q2(久木元美琴):(西山報告に対して)宇都宮市の空き家の事例が,他の同規模の都市においてどの程度普遍性をもつと考えるか。
AN:推測になるが,空き家の発生状況はある程度人口規模が関係するのではないかと考えている。また人口規模が小さくなれば,空き家率も高まると考えられる。今後,都市規模を変えて空き家の状況を検討することも必要になる。
Q3(久木元):(西山報告に対して)空き家の発生状況には,同じ都市規模であっても中心性の強さや隣接・周辺都市との関係なども影響しているのではないか。
AN:宇都宮の場合は,東京の影響が考えられる。
Q4(後藤寛・横浜市立大):(小泉報告に対して)マンションのストックが東京圏ではかなり蓄積されているが,このことがどのような地域差につながっていると考えるか。また今回の発表は,シンプルな同心円構造を念頭に置いているようだが,例えば京阪神圏では通勤流動が錯綜し,圏域が分極化している。こうした分極化の萌芽は東京圏ではどの程度みられるか。
AK:1990年代後半以降,シングル女性が都心の特定エリアで増加してきたが,近年はそうしたエリアでも家族向けの物件が供給されている。これは,従来の家族的因子の分布パターンを変えていくと考えられ,同心円構造もいっそう不明瞭になっているではないかと考える。また京阪神圏の分極化をふまえた比較検討は,今のところ実施しておらず,今後検討していきたい。
Q5(安倉良二・立命館大学・非):(西山報告に対して)宇都宮市中心部のマンション開発はさほど活発ではないとのことだが,コンパクトシティなど,行政による中心市街地活性化の取り組みはどうなっているか。
AN:中心市街地活性化には取り組んでおり,中心部での居住を促進するための家賃補助なども実施している。しかし,家賃補助の対象年齢を超えると郊外に居住地移動してしまうなど,十分な効果を上げていない。また宇都宮市が掲げるコンパクトシティはネットワーク型のものであるため,郊外にも配慮している。この結果,中心部に集中的に施策を行える状況ではなく,結果的に郊外への分散がすすんでいる状況である。
Q6(川口太郎・明治大):(西山報告に対して)用途地域ごとの空き家の発生状況に違いはあるのか。また専用住宅と店舗併用住宅では空き家発生プロセスが異なると思うが,この点について教えてほしい。住宅所有者へのアンケートも実施されたようだが,そちらの結果についても教えてほしい。
AN:用途地域ごとには分析していないので詳細はわからないが,宇都宮市の用途地域の特徴として,建蔽率が緩やかな用途地域が多いことが挙げられる。これも中心部において空き家が多いことの背景にあるのかもしれない。専用住宅と店舗併用住宅の比較は,今回は分析しておらず,今後検討したい。住宅所有者へのアンケートでは,不明が5分の1とかなりの割合を占めている。また複数の空き家を所有する者が非常に多く,この大部分は貸家であった。これは,1970年代に工場労働者向けに大量に供給されたものであり,この貸家が放置されて空き家化するという状況もある。空き家発生の理由で最も多いのは,借りていた人がいなくなること,次いで所有者の死亡(相続),子どもの元や施設への移動と続く。空き家の定義も住宅所有者によってまちまちであり,住宅・土地統計調査などと同様の結果は得られにくい。
Q7(久木元):(西山報告に対して)空き家問題の焦点化には,政治的な背景があるのではないか。
AN:あるのかもしれない。例えば,限界集落として報道されている山村集落であっても,実際には耕作放棄地も空き家も少ないということもある。
Q8(中川聡史・埼玉大):(小泉報告に対して)今回の報告のマンション供給には分譲だけでなく賃貸も含まれているのか。人口増減からみると,分譲だけでなく賃貸も重要であるし,分譲でも投資用に購入するケースも多いと考えられる。
AK:今回の報告は,データの制約上,持ち家のみを取り上げている。中古や賃貸も取り入れていくべきであると考える。
Q9(西山弘泰・九州国際大学):(小泉報告に対して)東京23区では中古物件がファミリー層の受け皿になっていると思われるが,これはどの程度の割合になっているか。
AK:中古物件はデータをとりにくいという問題があるが,約15%という報告があり,決して小さくない数字である。
Q10(荒井良雄・東京大):(小泉報告に対して):タイトルに東京都心部とあるが,分析では東京23区を対象としている。実際,23区でも都心区と周辺区とでは大きく異なる。この報告ではこれらをどのように区別しているか。また現在の居住を過去と比較検討する場合,両時期の住宅取得行動モデルを同一のものと考えるのは難しいと思われる。例えば,結婚年齢,住宅取得コストなどは現在と30年前とでは大きく異なる。
AK:23区を一つとしてみることには限界があるが,今回の分析は東京圏という大きなスケールで検討するものであるため,あえて形式地域として一つにまとめた。今後,東京23区に着目した分析を行う際には,分譲マンションの分布をもとにして区別していきたい。住宅取得行動については,全体的にライフステージ進行が遅れていることが,特に男性においては影響を及ぼしている。
Q11(川口太郎):(小泉報告に対して)現在の東京圏において割合が高まっている東京圏出身者は,結婚直前に親元に住んでいることが多い。こうした人々が結婚して住宅を探す際,実家の場所が重要な意味を持つ。これが高度経済成長期の住宅取得行動とは大きく異なる条件ではないか。
AK:高度経済成長期には,不動産価値が上がっていったため,住宅取得したほうが資産の総量が大きくなると言う,住宅取得のための誘因があった。しかし現在は,新築で購入しても数年後には価値が大幅に下がるため,マンションを購入する最後の後押しが弱いといえるのではないか。その際に,実家の場所は購入物件の選定に影響を及ぼすと考えられるので,今後検討を進めたい。
Q12(久木元):(小泉報告に対して)現在は,非正規雇用化,給料の上昇が見込めないことなど,住宅取得のコスト感が増しているように思えるが,一方で30年前は物価・給与の上昇と同時に非常に高い住宅ローン金利によるコスト感があった。こうした点を比較検討することも重要と考える。また,東京圏内部におけるライフコースの地域差の検討も重要であろう。
AK:その点も重要と考えているので,今後検討を進めたい.
Q13(荒井良雄):(西山報告に対して):賃貸用住宅の扱いについて,入居者がいないケースも空き家としてカウントされる。これは空き家問題と言うよりは,住宅需給のアンバランスの問題と言えるのではないか。また空き家発生の要因として,就業地の郊外化等を挙げているが,これは空き家発生が顕著になる以前から生じている現象であるため,直接的に空き家発生と結びつけるのは難しいのではないか。むしろ,都心空間が更新されないことが大きいのではないか。
AN:ご指摘のように,賃貸で空き家になっているものは他の空き家とは性格が異なるので,分けて考えるようにしたい。空き家発生要因について,中心部において,デベロッパーがマンション開発を行うメリットがあれば,空き家は解消されていくと思われる。しかし,そのようにはなっておらず,人々は利便性を求めて郊外へと移動していくため,空き家は増加していると考えられる。
Q14(根田克彦・奈良教育大学):(西山報告に対して)中心部では,家主が賃貸料を下げないし売りたがらないため,不動産価格が下がらないという問題もある。これも中心部衰退の要因の一つと言えるのではないか。もう一つ,イギリスの例を挙げると,住宅市場において中古物件が多く,10年後,20年後の人口予測に基づき,新築住宅の建設数は制限されている。同様の政策が日本でなされる可能性はないのか。
AN:住宅市場における民間の力がイギリスと日本では違っており,日本では規制が緩く,民間任せになっているところがあるため,新築住宅が増えていくのではないか。また日本の住宅はスクラップアンドビルドが中心であることも,ヨーロッパとは異なる点である。
Q15(熊野貴文・京都大・院):(小泉報告に対して)東京23区の住宅密集地において,木造賃貸住宅が新たな一戸建て住宅に細分化されているようなケースがあれば教えてほしい。
AK:東京23区は地価が高く,一戸建て住宅の供給には大きな制約になっていると思われる。供給された一戸建て住宅もかなり狭いものが中心である。木造賃貸住宅の密集するエリアは所有関係が複雑な場合が多く,そのような事例は非常に限られていると考えられる。
Q16(熊野貴文・京都大・院):(西山報告に対して)宇都宮市において,民間の分譲業者が参入して空き家が更新されるような事例はあったのか。
AN:中心部において,大規模な空き家をパワービルダーが取得して数棟の住宅を建てるという事例はある。

(参加者17名,司会:久木元美琴,記録:稲垣稜)
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2015.07.04  Comment:0
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