上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- 
第56回 都市圏研究部会
(大会部会アワー)

日 時: 2015年11月14日(土) 11:00~12:30

会 場:大阪大学豊中キャンパス 全学教育推進機構講義B棟 B207
〒560-8532 豊中市待兼山町1番16号
会場へのアクセスは、以下をご参照下さい。
http://www.osaka-u.ac.jp/ja/access/toyonaka/toyonaka.html

研究発表:

都市の空間構造の変容と商業集積―「中心地―補完地域関係」から考える―
・・・・・・・・・千葉昭彦(東北学院大学)

趣旨:2014年に日本都市学会賞(奥井記念賞)を受賞した,千葉昭彦(2012):『都市空間と商業集積の形成と変容』原書房をもとに討議する。本書は,商業集積の盛衰をその補完地域に相当する住宅開発との関係で解明したものである。商業集積の衰退を都市構造の変化との関係で解明することにより,都市地理学の立場からまちづくりに取り組むための理論的枠組みを示した点で高く評価できる。

連絡先:根田克彦(奈良教育大学) E-mail: neda#nara-edu.ac.jp (#を@に置き換えて下さい)

<報告要旨>

■都市の空間構造の変容と商業集積―「中心地‐補完地域関係」から考える―
千葉昭彦(東北学院大学)
 クリスタラーの中心地理論では、供給原理に基づく中心地システムなどでその中心地の分布と補完地域の広がりが論じられている。しかし、これは静学的分析であり、擬制に過ぎないとしていて、現実を扱うのは動学的分析であるとしている。中心地の盛衰を補完地域の変化でモデル化すると、3つのパターンとなる。すなわち、人口が増加した場合、人口減少の場合、人口がほとんど変わらない場合である。以下、主として最寄り品取り扱いを念頭に置いて整理する。
 人口増加の一例として都市郊外での宅地開発を挙げることができる。これは、新たに補完地域が形成されることから中心地の発生をもたらす。特に面積が大きい開発地では、その販売促進に資するために開発地の個性化として商業施設の誘致もみられた。中小規模の宅地開発が多数みられる場合には、開発地の近隣で商業集積が形成されることもあった。これは自家用車普及等によって加速されることにもなった。なお、近年ではまちなか居住の増加に伴い、その近隣での商業施設の立地が目立っている。例えば、小規模スーパーや惣菜等の取り扱いを増やしたコンビニなどである。
 都市の外延的拡大が進む中、人口がそれほど増加しない地方都市などでは中心部での人口減少がみられ、そこでの中心商店街の停滞・衰退が進んだ。旧来の商店街では一定の業種が揃うことによって利便性が確保されていたが、ある業種が欠けることによって利便性が低下し、その商店街などの衰退が加速される。近年では郊外住宅地などでも人口減少・高齢化などの進行によって類似の動向がみられる。特に大型店の撤退・倒産などによって買物難民(弱者)問題が顕在化しつつある。
 人口に変わりがないとしてもその社会的属性が変化することが少なくない。従来専業主婦が居る核家族が中心であった地域の居住者が、単身化や共稼ぎ化するのに伴って、消費者が求める商品量、価格帯、商品内容、営業時間等に変化が生ずる。商店・商業施設がこの変化に適応できなければ受給間のミスマッチが発生することになり、買い物客は他の商業集積を選択することになる。このような状況下ではミスマッチを解消することが商店街の活性化につながると思われる。
なお、買い回り品の取り扱いのウエートが大きい商業集積地の場合、補完地域は広域になることが多い。そのため、人口の増減もその盛衰に影響を及ぼすが、同時に交通体系の変化、とりわけ道路網の整備などの持つ意味が大きいと考えられる。

■討論
根田克彦(奈良教育大学):補完地域について人口増減という観点で整理していたが,都市圏と対応する最高階層の補完地域を念頭においているのか,その他の階層のものも含めて考えているのか。
千葉:いずれの補完地域も視野に入っている。酒田や青森のケースは,最寄品を扱うことを想定している。仙台都市圏のような広い範囲を想定した場合,高速バスや高速道路の整備状況が集客に影響を及ぼしている。人口増減だけでなく,アクセスなどを考慮した交通体系も念頭におく必要がある。
根田:どちらかというと仙台は最高階層に位置する都市であり,仙台都市圏の中心地と想定できる。理論化する場合は,いくつかの段階に分けて考える必要はないか。
千葉:その通りである。
根田:鶴岡の例に関して,中心市街地と郊外とで需要の特性が異なることから,中心地と郊外大型店とですみ分けが可能という点は,ある程度,イギリスの場合と似ている。ただしイギリスでは郊外に計画的に配置されたスーパーストアが,その周辺の需要をまかなっている。一方で日本では立地規制が弱く,住宅地や農地のなかに立地する場合がある。そうすると,日用品や食料品などの需要を郊外全体では満たしているかもしれないが,公共交通や徒歩での利用を考えるならば,需要に対して供給が不足するエリアが生じるのではないか。すみ分けについて,全体的には可能かもしれないが,一方で,中心地論でいう中心地の配置を考慮すべきではないか。
千葉:すみ分けについて,仙台では明確である一方で,鶴岡や白川ではそうではない。後者の中心市街地では買回品と最寄品とが混在していることから,大型店の立地によって郊外に客を奪われてしまう。ただし,ここには客の居住地変化という動きもあり,当該客が中心市街地に求めていたものが変化していくことを考慮する必要がある。こうしたこともあって,すみ分けと明快に言い切れるものではない。このほか酒田の場合,中心部で大火があり居住者が郊外に移転した歴史をもつ。そのとたん中心市街地が衰退していった。これも中心市街地の補完地域が変化した例である。
荒木一視(山口大学):発表テーマから少しずれるかもしれないが,商店街を構成する個々の店舗の実状などについて,お聞かせ願いたい。
千葉:高齢化の進む住宅地の商店街の例になるが,ここは,かつて核家族世帯を客として商売していた。しかし,大学生など単身世帯が増えてきたため,客にあわせて商売のやり方を変える必要性がある。こうしたことを商店街で話す機会があったが,反発もあった。店主のすべてが,これまでの商売のやり方を変えることができるわけではない。この他,小学校や役所の近くで営業していた店舗について,少子化や役所の移転によって客が減少していた。ここでも,時代にあわせ閉店時間を遅くすることなどを提案したことがあるが,店主にも生活があり受け入れづらいものがある。ただし,偶然に遅い時間まで店舗を開けていた際に,以前から関心をもっていた近隣住民の来店があった。そうした状況を考えていく必要がある。
伊東 理(関西大学):どのような意味で補完地域を捉えているのか伺いたい。というのも中心地論の最近隣中心地利用仮説は,現代では自動車利用などもあり崩れてしまっている。また,中心地に対する補完地域それぞれは排他的ではなく重層的である。こうしたことを踏まえると,大型スーパーは近隣商業地をいくつも含むかたちで大きな補完地域をもつこと,また経営サイドからみると最寄品などを中心としたスーパーマーケットが典型だが,成立閾値が人口という観点でかなり上がっていること,こうした点を突っ込んで議論する必要はないか。また,政策などを考えるのであれば,衰退せざるを得ないところと,衰退させてはいけないところなど,中心地を選択的に考える必要はないか。現代的な意味合いで補完地域をどのように捉えれば良いのか伺いたい。
千葉:中心地や補完地域はモデルであり,それが現実にストレートに当てはまるわけではない。ショッピングセンター,食品スーパー,個人商店があったとしても,それぞれの消費者がそれぞれのニーズに合わせ店舗を選択するため,補完地域が重なっているのは間違いない。また,ショッピングセンターの利用においても,最近隣中心地利用仮説は成り立つのではないか。というのも,仙台で消費者の買物行動についてアンケート調査したことがある。それまで,既存のショッピングセンターに行っていた消費者は,近くにできた新規のショッピングセンターに行くようになった。身近なところを通り越して遠くに行くことは,一般的ではない。重層的であることにはかわりないが,原理原則的な傾向は認められる。もう一点,買物難民などの問題との関係から,「なくしてならない中心地」について政策的に考える必要性に同意する。イギリスで聞いた話だが,多くの財政を公共交通機関など様々なインフラ整備に投入した既存中心市街地について,それを無に帰すことは,社会的に不適切な選択になるという考え方がある。これは明らかに商業だけでなく都市空間の整備の問題でもあり,市場に任せれば解決される問題でもない。
伊東:もう一つ質問したい。ショッピングセンターのみを取り上げれば,最近隣中心地利用仮説が成り立つかもしれない。しかし,実際には自然発生的で非計画的な近隣商店街もある。そうした違いを考えることが重要ではないか。計画的なものと旧来からの非計画的なものとの競合を考えると,両者には圧倒的な力の差がある。
千葉:計画的なものが旧来からの近隣商店街に与える影響について,その妥当性を考える必要はあるし, 利便性における競合は間違いなくある。
根田(奈良教育大):イギリスの場合,都市計画においてセンターの階層構造がきちんと設定されている。都心を頂点とするクリスタラー的な階層構造に合わせるかたちで食料品や日用品などの必需品を取り扱うセンターが計画される。一方で,そうでないものは,これが適用されない。こうした点について,どのように考えるのか。
千葉:日本にはイギリスのような計画性はない。ただし,住宅団地のなかに商業施設が誘致されることは,民間の行為であっても,計画的な配置なのかもしれない。 ただし,民間であるが故に撤退などを制約できない。しかも,日本の住宅団地は高齢化が進展し,商業施設の撤退や倒産が発生するなど,利便性が十分でない地域が生まれる。商業政策の問題とはいえ中心地論の体系を想定した場合,それを維持するために補完地域の人口や地域社会のあり方を問う必要がでてくるのではないか。
駒木伸比古(愛知大学):日本の場合,郊外で誘致する自治体があると,大型店の立地もそれに従う傾向がある。日本の場合,政策的影響により,逆に補完地域を歪めるのではないか。
千葉:今回の報告では政策的な話に触れることはできなかった。日本の場合,十分にそれをコントロールするかたちではない。自由にやらせた結果としての現状がある。商業施設の立地とともに居住のあり方も考えないと,結果として不経済なかたちが生まれる。自由にやらせた結果としての買物難民や郊外の人口減少を,どのように考えるべきなのか。そこでの道路やインフラの維持に公的資金が必要となることなどを含め,きっちと考える必要がある。
(参加者25名,司会:根田克彦,記録:鍬塚賢太郎)
関連記事
2015.09.28  Comment:0
Secret

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。